2014 Fiscal Year Research-status Report
ミジンコの単為発生卵で起こる特殊な減数分裂解析のためのゲノム編集基盤の確立
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26840115
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
蛭田 千鶴江 岩手医科大学, 教養教育センター, 助教 (20723018)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ミジンコ / ゲノム編集 / TALEN / ノックアウト |
Outline of Annual Research Achievements |
ミジンコは、環境の変化に応答して単為生殖と有性生殖を使い分けており、いずれの生殖様式でも2倍体の個体を形成する。単為生殖では、減数分裂の第一分裂に相当する分裂を途中でスキップし、第二分裂に相当する分裂のみが起こり発生するが、その分裂を制御する分子機構は明らかではない。本研究では、ミジンコのゲノム編集基盤を確立し、単為生殖で起こる特殊な減数分裂に関わる遺伝子の機能解析を進めることを目的としている。 まず、標的遺伝子の破壊(ノックアウト)法を確立するため、人工制限酵素TALEN (Transcription activator-like effector nuclease)を用いたDistal-less (Dll)遺伝子のノックアウトを試みた。Dllは、酵母からヒトに至るまで高度に保存されたホメオボックスをもつ転写因子で、節足動物では付属肢の遠位部形成に関わる遺伝子である。Dll遺伝子を標的とするTALENのmRNAを合成し、マイクロインジェクションにより産卵された直後の胚に導入した。その結果、付属肢の遠位部の形成が阻害された表現型が得られた。続いて、TALEN導入個体のDll遺伝子の塩基配列を確認したところ、数塩基の欠失が認められ、さらにその変異が次世代に受け継がれることも確認できた。このことから、ミジンコにおいてTALENを初期胚に導入することで、標的遺伝子を破壊してその機能を解析することが可能になった。これらの成果は、BMC Biotechnology誌に掲載され、Highly accessed paperに認定された(Hiruta et al., 2014)。さらに、外来遺伝子の付加(ノックイン)法の確立に着手したところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミジンコのゲノム編集基盤の確立にむけて、第一段階であるノックアウト法を確立し、論文発表することができた。続いてノックイン法の確立にむけて実験に着手しており、おおむね計画通りの進捗である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、現在進めているノックイン法を確立することで第一目的であるミジンコのゲノム編集基盤の整備を完了させる。続いて確立した技術を用いて、単為生殖でみられる「減数しない減数分裂」の遺伝子レベルでの解析を推し進める。
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Causes of Carryover |
年度途中での所属機関の変更により、当初の使用計画から変更が生じたため少額の端数がでた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
まず、ゲノム編集基盤の確立に必要な試薬・消耗品へ充当する。さらに、ゲノム編集基盤を確立後は、単為生殖様式の分子メカニズム解析に必要な試薬、消耗品、飼育器具に充当する。また、本年度は最終年度であり、成果報告のための学会参加や論文投稿費用にも支出する予定である。
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