2015 Fiscal Year Research-status Report
ケルコゾア生物における“ミトコンドリア型解糖系”の理解に向けた基礎的研究
Project/Area Number |
26840124
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中山 卓郎 筑波大学, 計算科学研究センター, 研究員 (70583508)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ミトコンドリア型解糖系 / 原生生物 / 解糖系 |
Outline of Annual Research Achievements |
[ケルコゾアにおけるMt型解糖系の多様性と進化] 前年度までの研究において、Mt型解糖系の代表的なタンパク質TPI-GAPDH結合タンパク質遺伝子を、大規模塩基配列解読が行われたケルコゾア生物について探索したところ、モナドフィローサと呼ばれるグループのみにおいて、相同タンパク質遺伝子が発見された。一方で、クロララクニオン藻類やグラノフィローサといったモナドフィローサに含まれない生物ではTPI-GAPDHタンパク質遺伝子は発見できなかった。この知見は、(1)モナドフィローサの共通祖先においてTPI-GAPDHを遺伝子水平転移によって獲得した可能性を提示するが、(2)ケルコゾア生物群の共通祖先がTPI-GAPDHを保持していたが、クロララクニオン藻やグラノフィローサの系統において二次的に失った、という可能性も排除できない。今年度はこれらの仮説を検証するため、モナドフィローサよりも進化的に早期に分岐した6種の生物について、それらのトランスクリプトームデータからTPI-GAPDHの探索を行なった。その結果、モナドフィローサ以外の生物においてTPI-GAPDH遺伝子は認められず、ケルコゾア生物群においてはモナドフィローサが独立して当該酵素を獲得した可能性が高い。 [Mt型解糖系酵素の細胞内局在確認] ケルコゾア生物細胞内においてMt型解糖系酵素が実際にミトコンドリア内部で機能しているかどうか、直接的な検証を行うため、免疫電子顕微鏡解析に着手した。Paulinella chromatophoraのTPI-GAPDHに対する抗血清をウサギを用いて作成し、Wester Blot (WB) 法によってその特異性を検証した。WBの結果、TPI-GAPDHの予想分子量の位置に高いシグナル強度をもつバンドが確認されたため、免疫実験に適した抗血清が作成できたものと結論づけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は(1)ケルコゾアにおけるMt型解糖系の多様性の把握および(2)Mt型解糖系酵素の細胞内局在検証、の2つの研究計画を含む。そのうち、Mt型解糖系多様性の把握については、予定していた実験および解析を遂行し、ほぼ研究が完了しているといえる。細胞内局在検証の研究も本年度中の実験完了を目指したが、タンパク質抗体作製の遅れから完了に至っていない。しかしながら、現在の時点で免疫解析に適したTPI-GAPDH抗血清の作成に成功しているため、実際の細胞内局在検証は来年度の早い段階で完了できるものと考えている。一部実験の遅れが見られるものの、全体の進行状況としては概ね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)ケルコゾアにおけるMt型解糖系の多様性の把握および(2)Mt型解糖系酵素の細胞内局在検証のうち、(1)についてはほぼ完了したため、今後は(2)Mt型解糖系酵素の細胞内局在検証に注力する。Paulinella chromatophoraの細胞に対し、今年度作成したTPI-GAPDH抗血清を用いて免疫電子顕微鏡観察を行う。細胞内局在検証実験が終わり次第、研究計画(1)および(2)の成果をまとめ、学会発表および論文執筆を行う予定である。
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