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2014 Fiscal Year Research-status Report

アジアにおける陸棲肉食性ヒル類の多様性

Research Project

Project/Area Number 26840127
Research InstitutionKyoto University

Principal Investigator

中野 隆文  京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (50723665)

Project Period (FY) 2014-04-01 – 2017-03-31
Keywords新種 / ヒル / 分子系統 / 国際研究交流 / ベトナム
Outline of Annual Research Achievements

アジアにおける陸棲肉食性ヒル類は,東アジアに分布するクガビル属(Orobdella)と東南アジアに分布するイツウコウビル属(Gastrostomobdella)の2属であるが,ともに種多様性が把握されていない.またインドシナ半島は陸棲肉食性ヒル類が報告されていない空白地域であり,分布状況・種多様性は未解明である.
クガビル類については,本州中部地域より得られた標本の形態観察ならびに分子系統解析の結果より,未記載種であることが確定したため,新種として記載した.このクガビルは性成熟サイズが4cmを超えない小型の種であるが,既知小型クガビルとは系統的に離れており,クガビル属において性成熟サイズの大小が並行的に進化したことを明らかにした.また,同属他種との同所的分布においても体サイズの大小が重要な要因である可能性を指摘した.くわえて,日本国内,特に東北,中国,四国地方において採集調査を実施し,得られた標本の形態観察ならびにミトコンドリア遺伝子の解析を行い,東北地方において1未記載種を,更に中国,四国地方において複数の未記載種の存在を確認した.現在それら未記載種の記載論文を準備している.
イツウコウビル類については,ボルネオ島より得られた標本のミトコンドリア遺伝子の解析により,同島内において非常に高い遺伝的多様性をもつことが明らかになった.しかしながら,現段階では,分類学的異同は不明である.
インドシナ半島におけるインベントリーでは,ベトナム中部のKon Tum 高地において採集調査を実施したが,陸棲肉食性のヒル類を採集することは出来なかった.ベトナム北部における調査でも陸棲肉食性ヒル類は採集出来ていないため,インドシナ半島が陸棲肉食性ヒル類の空白地域である現状は変わらない.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

クガビル類については,小型クガビルを新種として記載するとともに現在の同属他種における同所的分布が体サイズの大小により可能となっていることを指摘することが出来た意義は大きい.現在明らかになっている未記載種についても体サイズの異なる種が同所的に分布していることから,陸棲肉食性ヒル類の進化史を考察するうえで重要な観点を明らかにすることが出来たと考えられる. 未記載種についてもその数,産地,分布域をある程度まで把握することができている.
イツウコウビル類については,調査した標本の数は限られているものの,形態的そして遺伝的多様性が非常に高いことが判明しており,クガビル類だけでなく陸棲肉食性ヒル類の種多様性が非常に高く,未記載種がまだ存在していることが判明した.タイプ標本ならびにタイプ産地を対象とした採集調査については,当該年度中に計画を進め,実施できる算段がついたため,既知種の再検討により,研究期間中に本属の多様性の概要を明らかに出来ると考えられる.
インドシナ半島における陸棲肉食性ヒル類の調査においても,ベトナムに限らず他地域における調査の打ち合わせが進んでいる.イツウコウビル類の研究は研究計画より若干の遅れがあるものの,調査実施の見込みが立っていることと,そしてクガビル類については順調に研究成果が蓄積されており,準備も進んでいることから第1年度目の研究達成度をおおむね順調と判断する.

Strategy for Future Research Activity

クガビル類については現在明らかになっている未記載種について,形態観察そして核とミトコンドリア遺伝子の分子解析が終了したものから順次記載論文を準備し,発表する.くわえて,国内でさらに調査が必要と考えられる,九州地方と東北北部において調査を行い,記載に必要な標本の採集に努める.また不足している国外のクガビル類について追加の標本を得,属全体の進化史を明らかにするために,台湾ならびに極東ロシアにおける採集調査の打ち合わせを現地の研究協力者と実施する.
イツウコウビル類については,既知種のタイプ標本ならびにタイプ産地から得られた標本に基づいて既知種の再検討を行うことが喫緊の課題である.既知種のタイプ標本を収蔵しているアメリカの国立自然史博物館ならびにフィラデルフィア自然科学アカデミーにおいて標本の形態観察を行う.採集調査では,サラワク州に位置するタイプ産地において採集調査を行うとともに,現地の博物館においてヒル類コレクションの調査を行う.新たに得られた標本については形態観察に加えて,分子系統解析を行い,種多様性だけでなく各種の系統関係を明らかにする予定である.
インドシナ半島における採集調査では,タイの現地研究協力者が有力な情報を獲得しており,その情報に基づいてタイ西部において調査を実施する.国外の採集調査においては現地研究協力者と緊密に連絡をとり,限られた期間の中で確実に成果を上げることが出来るように努める.

Causes of Carryover

イツウコウビル類についてタイプ産地における採集調査ならびに国外博物館訪問によるタイプ標本の調査を当該年度中に実施することが出来なかったため,研究計画当初の請求額に対して旅費の支出額が少額になった.しかしながら,国外の採集調査ならびにタイプ標本の調査は中止にしたのではなく,次年度以降に実施する計画に変更したものであり,さらに,調査計画を立案中に,調査実施に際しては現地ガイドの雇用や小型船のチャーター等,当初の予定より支出が見込まれることが判明した.研究計画全体の進捗状況を勘案した結果,当該年度未使用額と次年度請求額を合わせたうえで研究を遂行することが望ましいと判断したため,次年度使用額が生じた.

Expenditure Plan for Carryover Budget

次年度の研究費はその多くを旅費に使用する予定である.特に国外旅費については助成金全体に占める割合が高くなり,アメリカの博物館におけるタイプ標本調査,サラワク州(マレーシア),そしてタイ西部における採集調査を実施予定である.特にサラワク州における採集調査では現地での許可申請も含めた滞在期間,そして目的地までの交通手段のため支出額は最も高い割合を占めると想定している.加えて現地ガイド,ポーターの雇用のために謝金の支出も見込んでいる.
物品費については標本を保存,管理するための標本瓶ならびに分子実験を行うためのプライマー,試薬の購入に充てる.その他,論文の英文校閲費ならびに投稿料の支出を見込んでいる.異動先研究機関で早期に研究体制を整えるとともに,今までの採集成果を踏まえ,地点を絞った採集調査を実施することで効率的に成果を上げ,論文作成に努める.

  • Research Products

    (2 results)

All 2014

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Open Access: 1 results,  Acknowledgement Compliant: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] A new quadrannulate species of Orobdella (Hirudinida, Arhynchobdellida, Orobdellidae) from central Honshu, Japan2014

    • Author(s)
      Takafumi Nakano
    • Journal Title

      ZooKeys

      Volume: 445 Pages: 57-76

    • DOI

      10.3897/zookeys.445.7999

    • Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
  • [Presentation] 本州産クガビル属(ヒル亜綱:吻無蛭目:イシビル形亜目)の一未記載種について2014

    • Author(s)
      中野隆文
    • Organizer
      日本動物分類学会
    • Place of Presentation
      国立科学博物館,つくば
    • Year and Date
      2014-06-08 – 2014-06-09

URL: 

Published: 2016-06-01  

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