2014 Fiscal Year Research-status Report
外生菌根菌の種多様性はなぜ低緯度で低くなる?~共生樹種の系統的多様性に着目して~
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26840128
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 博俊 京都大学, 生態学研究センター, 研究員 (10635494)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 多様性 / 共生 / 菌類 / 植物 / DNA / 菌根 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「ブナ科・マツ科・フタバガキ科等の樹種と共生する菌類である外生菌根菌において、その種多様性が低緯度地域ほど低くなる」という傾向に着目しており、このような一般的な生物の種多様性の緯度勾配と逆のパターンがなぜ生じるかを明らかにすることを目的としている。本研究では、「外生菌根菌の種多様性は緯度よりもむしろ外生菌根性樹種の系統的な多様性によって決まっている」という仮説を掲げており、この仮説の検証のために緯度の異なる地点において、菌類の多様性と植物の(系統的な)多様性との相関を調べることを計画している。この研究計画の初年度に当たる本年度には、北海道天塩町、滋賀県大津市、および沖縄県八重山郡竹富町という緯度の異なる3地点において、野外調査を行った。野外調査では、それぞれの調査地において12個ずつコドラートを設け、各コドラートから土壌コアを16個ずつ採集した。採集した土壌コアから、菌類の菌糸と植物の細根の融合体である外生菌根を選別し、水道水で洗浄した後、DNAサンプルとした。さらに、土壌コアから選別した土壌は化学分析用のサンプルとした。次年度には、もう一つの調査予定地であるマレーシアサラワク州のランビルヒルズ国立公園でも同様の調査を行い、DNAサンプルと化学サンプルの解析を順次行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内の3地点での野外調査を当初の予定通り、無事、遂行することができた。予定していた海外調査に関しては、カウンターパートの都合で、次年度に見送ることとなった。次年度には、海外調査を行い、DNA実験と化学分析を行っていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、まず、もう一つの調査予定地であるマレーシアサラワク州のランビルヒルズ国立公園で同様の野外調査を行う予定である。この調査が完了した後、DNAサンプルと化学サンプルの解析を順次進めていく予定である。DNAサンプルに対しては、DNA抽出を行った後、菌類、または植物に特異的なPCRプライマーを用いて、菌の遺伝子領域(核ITS領域)と宿主樹種の遺伝子領域(葉緑体rbcL領域)をPCRで増幅する。さらに、PCRの増幅産物から、次世代シーケンサー(Illumina, Miseq)を用いて、菌根を形成する菌(外生菌根菌)と宿主樹種の塩基配列を解読する予定である。土壌サンプルに対しては、pHメーターを用いて土壌pHを測定した後、CNコーダーを用いて土壌の炭素/窒素比を測定することを予定している。これらの分析で得られたデータに基づいて、宿主樹種の系統的な多様性が外生菌根菌の多様性にどの程度影響するかについて評価していくつもりである。
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Causes of Carryover |
当初予定していた海外(マレーシアサラワク州ランビルヒルズ国立公園)での調査が現地カウンターパートの都合があり、次年度に見送ることになったため、この分の調査費用を次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度、予定していたマレーシアでの調査を行うための経費として、本経費を使用する予定である。
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