2015 Fiscal Year Annual Research Report
フィールドにおける群集と進化のフィードバックループの解明
Project/Area Number |
26840135
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
内海 俊介 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (10642019)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 進化 / 群集 / 生態ー進化フィードバック / 多様性 / 昆虫 / 摂食行動 / ハムシ / ヤナギ |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、進化が急速に起こりうるという実証研究の蓄積により、生態と進化の両方向の相互作用に関する研究が注目を集めている。しかし、これまでの研究は単純な群集を対象とする室内実験が主であり、形質の進化動態と生物群集の構造の動態との相互作用を明瞭に検証した野外実証研究はない。そこで本研究は、適応進化と生物群集の相互作用の実態を解明することを目的として、ヤナギ類の植食者であるヤナギルリハムシ(以下、ハムシ)を主な材料として野外操作実験を行った。 具体的には、ハムシの摂食行動の進化動態と生物群集動態の相互の効果を検証するための野外実験を行った。雨龍研究林内に自生するオノエヤナギ成木をネットで囲ったメソコズムを8基設置し、摂食行動の遺伝的変異を操作したハムシ集団を以下の3処理用意した:1.新葉を好むタイプ(スペシャリスト)、2.葉齢への好みのないタイプ(ジェネラリスト) のみで構成した「遺伝的変異が小さい処理(進化が起こりにくい)」と、3.両タイプと混合させた「遺伝的変異が大きい処理(進化が起こりやすい)」。各メソコズムをこの3処理に割り当てた。植物の葉形質・樹冠の節足動物の種数と個体数を2年間追跡調査するとともに、1基当たり約15個体のハムシ成虫を複数回採集して、ハムシ摂食行動の進化動態を追跡した。進化動態を追跡するために、ゲノムワイド関連解析によって検討した一塩基多型マーカーを用いてジェノタイピングを行った。 野外実験の結果、ハムシ処理間で群集動態が有意に異なっており、ハムシの摂食行動の進化が樹冠全体の節足動物群集にまで波及効果を持っていた。また、この群集への波及効果がハムシの進化動態へフィードバックすることも明らかになった。すなわち、形質の進化と節足動物群集の強い相互作用が短い時間スケールで生じており、それが野外における多様な生物種から構成される群集の動態を決定づけることが示唆された。
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