2015 Fiscal Year Research-status Report
森林での植物-土壌フィードバックを駆動する土壌病原菌の同定と分布パターンの定量化
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26840145
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
潮 雅之 龍谷大学, 科学技術共同研究センター, 博士研究員 (40722814)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 微生物群集植物 / 森林生態系 / 病原菌 / 植物土壌相互作用 / 大量シーケンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は森林生態系における土壌病原菌(真菌)の分布パターン(主に母樹との空間的な関連性)を明らかにするために行われている。2015年度は冷温帯林におけるサンプルを取得するために北海道・天塩にある北海道大学の演習林(天塩演習林)において野外調査を行った。 天塩演習林において、針葉樹・広葉樹の優占種・非優占種をそれぞれ1種(合計4種)を対象種として、それらの実生の地下部と地上部をサンプリングした。また、母樹からの距離の効果を検証するために、母樹の樹冠下・樹冠外の処理区を設けてサンプリングを行った。各処理区の反復は4で行い、合計64サンプル(= 根/葉 × 樹冠下/外 × 4樹種 × 4反復)を採取した。サンプルはDNA保存液に漬けて冷蔵状態で研究室に持ち帰り、DNA抽出を行った。 抽出したDNAは2014年度にサンプリングした熱帯林のサンプルと合わせて、次世代シーケンサーによる真菌相解析に供した。まず、真菌特異的プライマーを用いてPCRによりサンプルDNAの特定領域を増幅し、さらなるPCRによってIllumina MiSeq用のシーケンシングプライマーとサンプル識別用のタグ配列を付加した。その後、PCR産物を精製・目的DNAサイズの切り出しを行い、MiSeqによるシーケンシングを行った。得られたDNAデータは解析用パイプラインによって前処理が終了し、今後病原菌の分布と母樹からの距離の関係、およびそれらの気候帯での違いに関して解析・考察を行う予定である。 上記の調査・実験に加えて2015年度は本プロジェクトに関わる2件の招待講演を行った。1件は熱帯林の地下部と地上部の生理的な同調性に関わる発表、もう1件は熱帯林における針葉樹の地上部-地下部相互作用に関する発表であった。また、本プロジェクトに関わる1本の論文が発表され、またもう1本を投稿した。投稿中の論文は、現在は査読者のコメントにもとづき内容を改訂中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年度はサンプリングの地点数を増やすことができた。2014年度に行った熱帯域の調査に加えて、冷温帯域のサンプルも追加できたことで気候帯ごとの比較が可能なサンプルが揃った。また、2014年度に行った実験環境の整備のおかげで、本年度はDNA解析を順調に行うことができた。質の高いDNAデータを得ることができ、今後の解析がスムーズに進むと期待される。以上の結果から、2015年度は研究計画が概ね順調に進行したと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度は取得したDNAデータの統計解析を主に行う。MiSeqによる解析の結果取得したDNA配列のデータは、現在までで延べ150サンプル以上、500万配列程度である。これらの配列を、病原菌由来と考えられる配列に分け、熱帯域と冷温帯域において病原菌の分布パターンと母樹の分布パターンがどのように異なっているか、詳細な統計解析を行う予定である。また、サンプルは根と葉に分けて採取しているため、樹種特異的な病原菌が主に根に感染しているのか、それとも葉に感染しているのかの解析も行う。 統計解析に加えて、余裕がある場合には温帯域もしくは亜熱帯域での追加サンプリングも考えている。サンプリングデザイン・DNA解析の手順は熱帯域・冷温帯域と動用に行う予定である。
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Causes of Carryover |
研究・実験計画の工夫により支出金額を最小限に抑えたことによる。例えば、調査において研究計画の見直しにより調査日程の短縮を行ったことや、試薬メーカーのキャンペーン時に試薬を購入するなどの工夫によって実験経費を抑えたことが効いていると考えられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
110,000円程度の次年度使用額が生じたが、これは追加実験の試薬代、もしくは追加で必要となる可能性があるメモリやハードディスクの購入代金として利用する予定である。また、論文執筆に際しての英文校閲費・投稿料としても利用する予定である
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Research Products
(4 results)