2014 Fiscal Year Research-status Report
ヒトを含む霊長類における下顎骨形態の進化的・機能的意義に関する基盤研究
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26840155
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
深瀬 均 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任講師 (00582115)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 下顎骨形態 / オトガイ孔 / 個体発生 / 霊長類 |
Outline of Annual Research Achievements |
成長期間におけるオトガイ孔の位置と開口方向の種間変異およびその要因を調べるため、ヒト、チンパンジー、マントヒヒの乳児から成体までの下顎骨CTデータを用いて、オトガイ孔とそれに近接した歯牙(dc、dm1、C、P3)の位置的関連性について調査を行った。結果として、まず、ヒトでは他の2種に比べてオトガイ孔とdcの位置が成長を通して、より前上方に位置していることが示された。一方で、マントヒヒのオトガイ孔とdm1は成長を通して最も低い位置にあった。3種とも乳児期の下顎骨において下顎管がdcとdm1の中間部に到達して開口することを考慮すると、オトガイ孔の位置の種間差というのは、基本的に下顎骨体内においてdc/dm1が形成される位置を反映しており、成長の過程ではその種ごとの位置的特徴がほぼ維持されることが示唆された。特に、ヒトにおいて特徴的に乳前歯が高い位置で形成されることは、究極的には、乳歯・永久歯を含めてヒトの前歯が比較的小さいことに起因すると考えられる。また、ヒト以外の2種においては成長の過程でオトガイ孔の下顎骨体内での位置は相対的に低くなるのに対して、ヒトにおいては歯槽骨の成長とともにわずかながら高くなることが示された。この際に、ヒトの下顎管の前方部は、特徴的に強く湾曲して垂直的に伸びることも観察された。これらのことは、ヒトのオトガイ孔の初期位置が歯槽部域に含まれるほど高いために、歯槽骨の垂直的な成長に開口部が引きずられて起こることが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度中に、結果の分析とまとめ、そして論文投稿と出版まで計画以上に進展することができた。これは、年度の上半期に研究に用いることができるまとまった時間が、予想以上に取れたことに起因すると考えられる。また、投稿からアクセプトまでも、予想以上にスムーズに進んだことも関係している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度には、京都大学霊長類研究所と連携し、新たに野生と飼育下のニホンザルの下顎骨のCT撮影を行う。この分析までが今年度のノルマとしているが、もし予想以上にスムーズに研究を推進することができた場合は、論文の作成と投稿まで年度内に進めたい。
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Causes of Carryover |
3月に予定してた出張およびフィールド調査が、学務による海外出張のため、キャンセルすることになり、この出張・調査を翌月以降、すなわち次年度に延期することとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
3月に予定していた出張・フィールド調査にて、次年度繰越金はほとんど消化される。
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Research Products
(3 results)