2014 Fiscal Year Research-status Report
イネの雑種不稔遺伝子S1がヘテロ個体特異的に不稔を誘導する機構の解明
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26850003
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小出 陽平 京都大学, 白眉センター(農学研究科), 助教 (70712008)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | イネ / 雑種不稔 / アフリカイネ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではイネの種間雑種で見いだされた顕著な雑種強勢を利用するため、障壁となる現象「雑種不稔」の克服を目指している。アジア栽培イネO.sativaとアフリカ栽培イネO.glaberrimaの種間交雑では得られた雑種は種子不稔となる。イネの種間雑種において種子不稔を引き起こす遺伝的要因の一つとして、S1遺伝子がイネ第6染色体上にマッピングされている。S1はヘテロ接合の状態で特異的に作用し、花粉および種子の退化を引き起こすことが明らかになっている。これまでにS1遺伝子をヘテロ接合で持つ種子を交配により作出し、得られた交配後の種子に重イオンビーム(炭素イオン照射 150Gy LET30)を照射した。重イオンビーム処理後、圃場に植物体を移植し、種子稔性が高い個体を選抜した。選抜した個体はS1遺伝子が欠損した個体である可能性が高い。そこですでに報告されているS1遺伝子候補領域をシークエンスし、変異が生じている箇所を特定した。 今年度はS1がヘテロ特異的に不稔を誘導する機構を解明するための基礎情報として、変異を生じていた遺伝子およびマップされた領域に存在する他の遺伝子の発現を調査した。S1ホモ接合体およびS1ヘテロ接合体を用い、減数分裂後の花粉形成時期を含むステージの葯からRNAを抽出した。抽出したRNAを用い発現様式を比較したところ、変異を生じていた遺伝子はホモ接合体およびヘテロ接合体の両方で発現していることが明らかとなった。また、S1候補領域内において発現が変化している遺伝子が複数見いだされた。この実験と並行して候補遺伝子の形質転換体の作出を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はイネの葯からRNAを抽出し、S1候補領域内の遺伝子の発現様式を調べた。発現解析を行うにあたり、供試したO.glaberrimaのS1候補領域のゲノム配列を決定する必要があり、そのための解析に時間を要した。一方で、候補遺伝子の形質転換体の作出については計画通り進展しているため、達成度は、「(2)おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の実験計画に基づき、2年目は正常個体および不稔個体のトランスクリプトーム解析から、不稔誘導に関わる遺伝子を明らかにする。また、作出した形質転換体の雑種における花粉稔性、種子稔性の評価を行う。
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