2015 Fiscal Year Research-status Report
イネの胚発生に関わるSEGMENTED EMBRYO遺伝子の解析
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26850005
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Research Institution | Kibi International University |
Principal Investigator |
吉川 貴徳 吉備国際大学, 地域創成農学部, 講師 (00721606)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | イネ / 胚発生 / 多胚 / 変異体 / 形態形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
イネ品種台中65号のMNU処理後代より同定されたsegmented embryo (sem)はひとつの胚が複数に分割した胚発生変異体である。通常イネでは受粉4日目から胚の器官形成が開始するのに対し、semでは同時期に期間形成が始まらず、胚の周縁より複数の未熟胚が発生し、それぞれが成長することにより複数の胚を形成する。したがって、SEM遺伝子は胚の発生パターンを決定する重要な遺伝子であると考えられる。本研究では胚発生におけるSEMの機能を解明することを目的に、平成27年度は以下の4実験に取り組んだ。 (1)SEM候補遺伝子を用いた相補性試験:平成26年度に同定したSEM候補遺伝子がsem表現型の原因であることを確認するため、相補性試験に取り組んだ。しかし、候補遺伝子をクローニングすることができず、相補性試験を行うことができなかった。そこで、候補遺伝子がコードするタンパク質の阻害剤を野生型に投与したところ、sem表現型をミミックすることができたため、これが原因遺伝子であることが明らかとなった。 (2)胚発生過程におけるSEM遺伝子の発現パターンの調査:野生型の未熟胚を用いてSEM遺伝子の発現パターンを調査した。その結果、受粉後1日目より10日目まで発現し続け、特に胚発生初期において強い発現が認められた。 (3)SEM過剰発現体の作出:今年度の取り組みによりSEM遺伝子を確定することができたが、上記(1)と同様の理由によりSEM遺伝子をクローニングすることができず、過剰発現体の作出を行うことができなかった。 (4)SEM様遺伝子変異体のスクリーニングおよび多重変異体の作出:イネゲノムデータベースを精査した結果、SEMファミリーはSEM遺伝子を含めて3遺伝子の存在が確認された。当初は変異体集団よりTILLING法を用いて逆遺伝学的スクリーニングを行う予定であったが、予定を変更してCRISPR法を用いてSEM様変異体を作出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
イネの胚発生におけるSEM遺伝子の機能解明を目的に、平成27年度は(1)SEM候補遺伝子を用いた相補性試験、(2)胚発生過程におけるSEM遺伝子の発現パターンの調査、(3)SEM過剰発現体の作出、(4)SEM様遺伝子変異体のスクリーニングおよび多重変異体の作出、の4実験を計画・実行した。その結果、原因遺伝子を突き止めることができ、その発現パターンも明らかにすることができた。しかし、遺伝子本体をクローニングすることができず、複数の手法を試みるも全て失敗に終わった。この原因として考えられるのは、SEM遺伝子そのものが全ての生物に広く保存されている遺伝子であるため、SEM遺伝子を含むベクターを取り込んだ大腸菌が死滅してしまう可能性が考えられた。このことにより、SEM遺伝子の相補性試験や過剰発現体の作出などを行うことができなかったため、実験計画より遅れて進捗していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究結果を踏まえ、平成28年度は以下の2実験を行う。 (1)SEM多重変異体の表現型の解析:平成27年度はCRISPR法を用いてSEMファミリー遺伝子の多重変異体(single, double, triple)の作出に取り組み、そのいくつかは変異体を得ることができた。平成28年度はまだ得られていない変異体の作出に継続して取り組み、最終的に全ての変異体を栽培して胚形態の観察を行う予定である。 (2)野生型に対するメバロン酸経路の阻害剤投与:SEM遺伝子はメバロン酸経路においてメバロン酸の合成に関与する酵素遺伝子であった。メバロン酸は下流にジベレリンやブラシノステロイド、ステロールなど多岐にわたる代謝産物を合成するため、sem変異体ではそれらが多様に相互作用しあっていることが推察される。したがって、これら下流の代謝産物それぞれが胚発生に及ぼす効果を検証するため、現在入手可能な各合成経路の阻害剤を野生型に投与し、胚形態の変化を調査する。 平成28年度は本課題最終年度であるため、上記実験が予定通り進行した暁には実験結果をまとめて論文化し、世界に広く発信していく予定である。
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Research Products
(1 results)