2015 Fiscal Year Research-status Report
イネにおける濁水冠水条件下の抵抗性機構の解明-葉の光合成活性に注目して
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26850007
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
曽根 千晴 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (30710305)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | イネ / 冠水 / クロロフィル蛍光 / 光合成活性 / 濁水 |
Outline of Annual Research Achievements |
イネの浸水・冠水害によって毎年莫大な被害が発生しているが、冠水中および退水後のイネの生理反応には不明な点が多い。冠水したイネの生存率は冠水した水の条件によって異なるが、これまでのイネの冠水抵抗性の研究は清水を使って行われることが多かった。本研究では、①より現場の状況に近い濁水冠水条件下の生理反応、②応募者らが開発したクロロフィル蛍光を用いた水中の葉の光合成活性の測定法の活用、③冠水ストレス抵抗性が異なるイネ品種の比較、を目的に研究を行っている。昨年度、培養土を溶かした濁水冠水区、水道水を用いた清水冠水区および清水冠水区を遮光シートで覆った遮光冠水区で、NIAS Global Rice Core Collectionを中心としたアジアイネ55品種を比較した結果、冠水下での草丈の伸長が異なるイネ品種を選抜した。本年度は、選抜した品種を用い、濁水冠水区、清水冠水区および遮光冠水区でイネを2週間冠水させ、退水20日後の無冠水の対照区に対する相対茎葉部乾物重で回復程度を測定した。冠水期間中、最上位展開葉の光合成活性を現すクロロフィル蛍光(最大量子収率(Fv/Fm))は、いずれの冠水処理区も冠水期間が長いほど低下し、濁水冠水区で最も早くかつ大きく低下した。したがって、濁水区でイネは浮遊物による遮光以外の影響も受けていることが考えられた。さらに、冠水の影響は品種によっても異なり、退水20日後の相対茎葉部乾物重が小さかった品種は,冠水下で冠水中に成長した葉のクロロフィル蛍光(Fv/Fm)が低く,冠水14日目のSPAD値が低かった。これらより、濁水冠水下で抵抗性が高い品種は、冠水中に上位葉で葉の光合成活性および葉緑素を維持していることが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画通り、平成27年度に予定していた濁水冠水条件下で抵抗性が異なったイネ品種の葉身のクロロフィル蛍光測定まで行うことができた。しかし、嫌気条件下の発芽耐性遺伝子AGとSub1の両方を持つAG+Sub1系統の種子の取り寄せ手続きに時間がかかっており、予定していたAG+Sub1系統の冠水中での発芽および生育におよぼす水温および濁度の影響は調べられなかった。現在、AG+Sub1系統の取り寄せを再申請するとともに、国内の生物資源研究所ジーンバンクよりSub1遺伝子を持つ品種を入手し、種子を増殖している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、AG+Sub1系統の種子が入手次第、冠水中での発芽および生育におよぼす水温および濁度の影響を調査する。本研究で選抜した品種とSub1遺伝子を持つ冠水抵抗性品種で、冠水条件による影響の違いを比較する。AG+Sub1系統の入手が研究期間中に間に合わなかった場合、抵抗性機構の解明が進んでいるSub1品種と比較することで、濁水冠水抵抗性機構の解明を進めることができる。
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Causes of Carryover |
予定していた国際イネ研究所からの嫌気条件下の発芽耐性遺伝子AGと冠水耐性遺伝子Sub1を持つAG+Sub1系統の入手に時間がかかり、予定していた実験が行えなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際イネ研究所からAG+Sub1系統を入手次第、止まっていたAG+Sub1系統の冠水中での発芽および生育におよぼす水温および濁度の影響を調査する。その水中ヒーターの購入および、RNA解析、学会発表および論文作成費に使用予定である。
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