2014 Fiscal Year Research-status Report
越冬器官の形成・分化に関わる開花関連遺伝子の新規機能の解明
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26850020
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
今村 智弘 東京理科大学, 基礎工学部, 研究員 (20468705)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 越冬組織 / 多年生植物 / リンドウ / Flowering Locus T / SOC1-like / FLC |
Outline of Annual Research Achievements |
越冬器官の形成は、多年生花卉が冬期の厳しい環境を越えて生存し続けるために必須な生理現象である。しかし、植物の越冬器官の研究は進んでおらず、形成に関わる分子やその調節機構の大部分は未知である。申請者は、リンドウの開花研究から、開花関連遺伝子の一部が開花調節以外の機能を持っており、特に塊茎や越冬芽などの越冬器官形成を調節する可能性を見出している。そこで本課題では、開花関連遺伝子の新規機能と作用機序を解明し、多年生花卉の越冬器官形成における新たな成長調節論を構築する。 本研究は、多年生植物のリンドウの越冬組織の形成において、越冬組織で機能することが予想される開花関連遺伝子GtFT1およびGtSOC1L、GtFLCの機能解明を目指している。平成26年度は、越冬組織における各遺伝子の基礎的な知見を得るとともに、培養系リンドウを用いた解析も実施した。その結果、培養系リンドウを用いた解析により、地上部で発現したGtFT1タンパク質が地下部へ移行することを見出した。さらに、露地越冬組織である越冬芽および塊茎の経時的な発現解析を実施したところ、GtSOC1Lは主に初期の越冬芽で、GtFLCは、初期の越冬芽と塊茎で高い発現を示した。平成26年度の研究成果として、学術論文を2報、国内の学会で1回報告した。平成27年度は、前年度の成果を基に、越冬組織形成における開花関連遺伝子の詳細な機能の解明を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リンドウの越冬器官の形成過程における開花関連遺伝子の機能を解明するための研究を実施している。具体的な研究内容は、1)GtFT1とGtCOが関与する塊茎形成について、GtFT1タンパク質の地下部への移行の調査、塊茎における相互作用因子および下流制御因子の探索と同定。2)GtSOC1LとGtFLCが関与する越冬芽形成について、作用箇所の特定、相互作用因子および下流制御因子を同定。以上の2つである。1)に関しては、まずGtCOがGtFT1発現を直接的に誘導することを明らかにした。つぎに、GtFT1タンパク質の地下部への移行を調査するため、接木を用いた方法と、植物ウイルスベクターを利用した方法を実施した。接木に関しては、接木を失敗しデータを得ることができなかった。一方、植物ウイルスベクターを用いた方法では、地上部で発現したGtFT1タンパク質が地下部へ移行することを見いたした。今後、GtFT1タンパク質の移行による地下部の変化を転写レベルで解析するため、RNA-Seqを実施する予定である。2)に関しては、越冬組織(越冬芽、塊茎)におけるGtSOC1LとGtFLCの詳細な発現解析を実施した結果、GtSOC1Lは主に初期の越冬芽で、GtFLCは、初期の越冬芽と塊茎で高い発現を示した。この結果から2つの遺伝子は機能する部位が異なることが示唆された。2つの遺伝子はともに転写因子であるので、サンプルの準備が整い次第ChIP-Seqによって直接制御遺伝子を探索する予定である。以上の研究結果は、当初の計画どうりであり達成可能な状況にあると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の成果よりGtFT1タンパク質の移行が確認できた。平成27年度では、GtFT1タンパク質の地下部への移行によって引き起こされる、地下部の発現変化をRNA-Seqにより網羅的に解析し、越冬組織形成につながる遺伝子を探索する。さらに免疫沈降とLC-MS/MSによって、地下部でのGtFT1が機能するための相互作用因子の探索を推進していく。これらの解析によりGtFT1が介する越冬組織形成機構を明らかにする。 一方、前年度の越冬組織での発現解析によりGtSOC1L、GtFLCの発現部位が異なることが明らかとなった。平成27年度では、これら2つ遺伝子の直接制御要因をChIP-Seqを用いて探索することにより、越冬組織におけるGtSOC1LおよびGtFLCの機能を明らかにする。 以上の計画を推進することにより、リンドウ休眠組織の形成機構を明らかにする。
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Causes of Carryover |
研究初年度は研究責任者の所属変更(平成26年4月から現所属)の影響で、当初計画を予定していた次世代シークエンサーによる外部委託解析が、初年度に実施することができなかった。そのため次世代シークエンサー解析のための予算(その他、消耗品費)を使用することができなかった。次世代シークエンサー解析に関わる予算は、次年度に解析することにより消化する予定である。また、旅費に関しては予定していた出張が1件取りやめになったため、予算を完全に消費することができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、おもに越冬組織における網羅的な発現解析および直接制御遺伝子の探索を推進する。さらに相互作用因子の探索も実施する。相互作用因子の探索は、免疫沈降によって得られたサンプルの解析を外部委託する予定である。一方、網羅的な発現解析および直接制御遺伝子の解析は、次世代シークエンサーの受託解析を計画している。得られた成果については、国内の学会発表や学術論文を通して公表する予定であり、学会参加費、外国語論文の校閲料金、投稿料および印刷料として研究費を使用する予定である。
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Research Products
(3 results)