2015 Fiscal Year Research-status Report
花きの生育・開花におけるスクロース代謝関連遺伝子の環境応答性と機能の解析
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26850023
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
原田 太郎 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 講師 (80468256)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | トルコギキョウ / スクロース代謝 / 環境応答 / 遺伝子発現 / 形質転換 |
Outline of Annual Research Achievements |
データベースのEST情報をもとにしたcDNAクローニングにより、トルコギキョウ‘ピッコローサスノー’の発達中の花弁で発現する細胞壁型インベルターゼ(CWIN)遺伝子の1つ(EgCWINa)の全オープンリーディングフレーム配列を明らかにした。さらに、CWIN遺伝子(EgCWINb)および液胞型インベルターゼ(VIN)遺伝子の1つ(EgVINa)の部分配列を決定した。併行して、細胞質型インベルターゼ(CIN)遺伝子(EgCIN)およびスクロース合成酵素(SUS)遺伝子(EgSUSa、EgSUSb)のクローニングを進めている。これらの遺伝子の発現部位および環境刺激に対する応答を明らかにするため、現在、2種類の異なる灌水条件(多灌水条件、少灌水条件)で植物の育成を行っている。 アグロバクテリウム法の2種類のプロトコルにより、トルコギキョウ‘ピッコローサスノー’の形質転換を試みた。これまでのところ、いずれの方法でも形質転換カルスは得られていない。これは、用いた品種がアグロバクテリウムに感染しにくいことが原因であると推察した。また、現在、上記で単離したEgCWINaをバイナリーベクターpBI121に導入し、EgCWINaを過剰発現させるためのコンストラクトの作製を行っている。 アクリル製チャンバーに窒素ガスを通気し、酸素コントローラーを用いて酸素濃度を自動的に制御することができる低酸素培養システムを構築した。このシステムを用いて植物を低酸素処理すると、発芽や初期生育が抑制されることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
スクロース分解酵素遺伝子の定量的な発現解析には、3’-非翻訳領域など遺伝子特異的な領域からプライマーを設計する必要がある。本研究においては、遺伝子のクローニングに関して、概して5’側部分配列は順調に決定できている一方、3’側配列の単離にやや時間がかかっている。今後、各遺伝子のcDNA全長配列を決定した後、速やかに発現解析を行う予定である。 形質転換に関して、2種類の方法を試したものの成功には至っていない。現在、トルコギキョウ形質転換の経験をもつ研究協力者の助言を受けながら改善策の検討を行っている。今後、(1) アグロバクテリウムの感染時間の延長、(2) 品種の変更の2つを試みる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
H26~27年度の研究成果から、最終的に7種類程度のスクロース分解酵素遺伝子のcDNAクローニングを完了できるものと見込んでいる。これらの遺伝子の発現を比較することで、花弁の発達や水ストレス、低酸素への応答と関連のある遺伝子を同定する。 形質転換については、これまで試みたアグロバクテリウム法を改善(アグロバクテリウムの感染時間の延長、品種の変更など)することで、まずEgCWINa過剰発現株の作出を目指す。早期に形質転換の見通しが立てば、EgSUSも過剰発現のための形質転換に供する。 低酸素処理については、まず構築した低酸素処理システムで小花の低酸素処理を行い、小花の形態変化や遺伝子発現を確認する。その結果を踏まえ、プラスチックフィルムと脱酸素剤を用いた切り花の低酸素包装を行い、花弁の形態、遺伝子発現およびスクロース含量への影響を調査する。
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