2015 Fiscal Year Research-status Report
多犯性細菌防除のための宿主域可変型ファージセラピーの開発
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26850027
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
平田 久笑 静岡大学, 農学部, 准教授 (00432196)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | バクテリオファージ / 蔬菜類軟腐病菌 / 植物病原細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
ワサビから分離された蔬菜類軟腐病菌(Pectobacterium carotovorum subsp. cartovorum)、およびそのバクテリオファージをモデルとして、ファージの宿主決定および感染特異性のメカニズム解明を目指している。 腐敗したワサビ組織から分離できたファージ PPWS1のゲノム解読を行った。その結果、Podovirus科の新種のファージであることを示し、系統解析によりPantoeaファージを含むPodovirus科 phikmvlikevirus属との類似性が認められ、またゲノム構造はPodovirus科のKlebsiellaファージとの類似性が示された。しかしながら近年、Klebsiellaファージについてはphikmvlikevirus属から独立させ新たな属を設置することが提案されている。PPWS1は、これらの属の中間的な特徴を有するファージであることがわかり、今回のゲノム解読によりPodovirus科の属の分類基準を見直す必要性を示す結果ともなった。 また、PPWS1は一般的に報告がある植物病原細菌のファージよりも温度耐性が低いことを示した。冷涼なワサビ栽培の環境に起因する性質であるとも考えられ、そのメカニズムを探った。その結果、高温処理によりファージは不活化し溶菌効率を低下させるが、ある一定期間の低温処理により復活することを確認した。PPWS1の粒子形成に関わるタンパク質が温度の影響を受けやすい性質を有する可能性が考えられ、タンパク質の特性を調べる予定である。 ワサビから分離された蔬菜類軟腐病菌は複数の系統が知られており、PPWS1はこの一部のみを溶菌する。PPWS1の特性解析には、他系統を溶菌するファージとの比較解析も必要と考えられ、ワサビ田の水より新たに2種の溶菌性ファージを分離した。今後、これら指示菌を異にするファージの比較解析により細菌とファージの相互関係を調べる材料とする計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究対象であるPPWS1の比較対照とするため、新たに蔬菜類軟腐病菌ワサビ分離株を溶菌するバクテリオファージの分離を試みた。その結果、新たに2種にファージを単離することができ、これらの性状解析を進めている。 また、PPWS1のゲノム解読後、他属ファージとの遺伝子構造の比較が明瞭となり、ファージ分類上の新たな課題が見出された。 このような成果に伴い研究課題が増え、当初の計画からやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 新規に分離された2種ファージの性状解析およびゲノム解読を進める。これにより、PPWS1との比較研究が可能となり、蔬菜類軟腐病(ワサビ分離株)とファージの宿主決定に関わるメカニズムについて、より普遍的な概念に到達することを目指す。 (2) Podovirus科 phikmvlikevirus属および暫定的な属として報告されているKlebsiellaファージの属と、PPWS1の特性を比較し、PPWS1の分類学的な位置付けを明らかにする。同科未分類ファージとの比較解析も行い、新たな属の提案の可能性も含めて検討する。 (3) ファージ感受性変異株のトランスポゾン挿入部位について調べ、宿主決定に関わる宿主側の因子の探索を継続し、メカニズム解明を目指す。 (4) PPWS1の性状解析の結果について検証を重ね、温度感受性に関わる因子およびメカニズムの解明を目指す。
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Research Products
(2 results)