2014 Fiscal Year Research-status Report
病原菌の表現型変異を利用したジャガイモ青枯病総合管理システムの構築
Project/Area Number |
26850030
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
森 太郎 滋賀大学, 教育学部, 講師 (90725053)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 青枯病菌 / 表現型変異 / 非病原性 / ジャガイモ / 生物防除 / 抵抗性誘導 / 土壌 |
Outline of Annual Research Achievements |
青枯病菌はナス属植物磨砕液中で容易に非病原性株に表現型変異すること、トマトおよびナスへの非病原性変異株の接種により青枯病の発病が抑制されることが明らかになっている。本研究は、土壌への植物の混和による青枯病菌の非病原化およびジャガイモへの非病原性変異株の感染による青枯病発病抑制について技術開発とメカニズムの解明を行い、青枯病菌の表現型変異を利用したジャガイモ青枯病の総合的管理システムを構築することを目的とする。初年度(平成26年度)は、以下の2点について研究を実施した。 1)土壌への植物混和による青枯病菌の非病原化条件の検討 無菌実験系を用いてジャガイモ磨砕液を混和した土壌における青枯病菌の表現型変異を調査した。その結果、対照として滅菌水を混和した土壌では青枯病菌はほとんど表現型変異を起こさなかったのに対して、ジャガイモ磨砕液を混和した土壌では表現型変異を起こした。また、その変異頻度(全青枯病菌数に占める非病原性変異株数の割合)は、高含水率・高温条件下および長期間の培養で70-90%と高くなった。 2)ジャガイモ青枯病発病抑制に最適な非病原性変異株の接種方法の検討 ポットで種いもから育苗したジャガイモ苗を用いて、非病原性変異株の接種(10^6および10^8 cfu/mlの生菌、死菌、培養濾液)による青枯病発病抑制効果を調査した。その結果、高濃度(10^8 cfu/ml)の非病原性変異株の生菌を接種した個体で高い発病抑制効果が得られた。また、簡易検定法として、セルトレイで種いもの芽を刳り抜いた抉芽から育苗した幼苗に高濃度の非病原性変異株の生菌を接種した結果、高い青枯病発病抑制効果が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)土壌への植物混和による青枯病菌の非病原化条件の検討 ジャガイモ磨砕液を混和した土壌において、青枯病菌は表現型変異を起こし、その変異は高含水率・高温条件下および長期間の培養で高頻度に認められた。このことから、青枯病菌を土壌中で高頻度に表現型変異させる条件を明らかにすることができ、平成27年度に行う温室内の汚染ベッドでの実証試験の条件設定が可能になった。 2)ジャガイモ青枯病発病抑制に最適な非病原性変異株の接種方法の検討 ポットで種いもから育苗したジャガイモ苗において、高濃度の非病原性変異株の生菌を接種すると高い青枯病発病抑制効果が認められた。また、セルトレイで抉芽から育苗した幼苗においても高濃度の非病原性変異株の生菌を接種することで高い発病抑制効果を得ることができた。これらより、発病抑制効果が高い非病原性変異株の接種方法を明らかにし、さらに簡易的な検定法を確立することができた。一方、種いもへの非病原性変異株の接種による青枯病発病抑制効果については検討途中であるが、翌年度の早期に明らかにする予定である。 以上より、「おおむね順調に進展している」と総合的に判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年目(平成27年度)は、研究計画に基づいて以下の研究を進める。 1)土壌への植物混和による青枯病菌の非病原化の実証試験:平成26年度の無菌試験で得られた土壌中の青枯病菌の非病原化条件に基づいて幾つかの非病原化処理方法を設定し、温室内の隔離ベッドに作製した青枯病菌汚染土壌において実証試験を行い、最適な処理方法を明らかにする。 2)細胞培養系を用いた簡易検定法の開発:ジャガイモの塊茎,茎または葉の外植片からカルスを誘導し、カルスを用いた非病原性変異株による青枯病発病抑制効果の簡易検定法を開発する。平成26年度に得られたジャガイモ苗を用いた発病抑制効果と相関性が得られる検定条件を明らかにする。 3)簡易検定法を利用した発病抑制効果の品種間差異の検定、抑制効果が高い菌株の選抜:簡易検定法を用いて非病原性変異株による青枯病発病抑制効果のジャガイモ品種間差異を調査し、発病抑制効果が高い品種を明らかにする。さらに、青枯病菌の様々な系統から非病原性変異株を作出し、簡易検定法を用いて青枯病発病抑制効果が高い非病原性変異株を選抜する。
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Causes of Carryover |
平成26年度は、備品の一部が予定より安価に購入できたこと、研究を効率的に推進したことにより次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額(240,865円)は、物品費(試薬、プラスチック・ガラス器具などの消耗品)に使用予定である。
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