2015 Fiscal Year Research-status Report
病原菌の表現型変異を利用したジャガイモ青枯病総合管理システムの構築
Project/Area Number |
26850030
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
森 太郎 滋賀大学, 教育学部, 講師 (90725053)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 青枯病菌 / 表現型変異 / 非病原性 / ジャガイモ / 生物防除 / 抵抗性誘導 / 土壌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、土壌への植物混和による青枯病菌の非病原化(表現型変異)およびジャガイモへの非病原性変異株の感染による青枯病発病抑制について技術開発とメカニズムの解明を行い、青枯病菌の表現型変異を利用したジャガイモ青枯病の総合的管理システムを構築することを目的とする。平成27年度は以下の研究成果を得た。 1.土壌への植物混和による青枯病菌の非病原化について、前年度、無菌条件下で明らかにした非病原化条件を基に、非無菌条件下で実証試験を行った。その結果、土壌への混和処理後40日目の変異頻度(全青枯病菌数に占める非病原性変異株の割合)は圃場の土で61%、市販の培養土では79%となり、非無菌条件下においても土壌への植物混和により青枯病菌を高率に非病原化できることが明らかになった。また、実証試験を通して、植物の処理方法および供試植物種について検討が必要性であると考えられたため、無菌実験系を用いて試験を行った。その結果、変異頻度は植物の処理方法(磨砕液、裁断片、水抽出液、乾燥粉末)および植物種(ジャガイモ、サツマイモ、ハクサイ、ナス、米ぬか)に影響を受けないことが明らかになった。 2.ジャガイモへの非病原性変異株の感染による青枯病発病抑制について、種いもへの非病原性変異株の接種を行った結果、発病が抑制される傾向が認められた。また、前年度確立した抉芽を用いた簡易検定法により、ジャガイモ16品種・系統および非病原性変異株12菌株について発病抑制効果を調査した。その結果、品種・系統および変異株間で大きな差異が認められ、効果的な品種・系統および非病原性変異株を選抜することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.土壌への植物混和による青枯病菌の非病原化について、非無菌条件下においても高率に青枯病菌を非病原化できることを明らかにした。さらに、実証試験を通して検討が必要であると考えられた点について、無菌実験系による試験を行い、非病原化の頻度は植物の処理方法(磨砕液、裁断片、水抽出液、乾燥粉末)および植物種(ジャガイモ、サツマイモ、ハクサイ、ナス、米ぬか)に影響を受けないことを明らかにした。 2.ジャガイモへの非病原性変異株の感染による青枯病発病抑制について、種いもへの非病原性変異株の接種により、発病が抑制される傾向にあることを明らかにした。また、細胞培養系を用いた簡易検定法の開発を行い、この検定法を利用して発病抑制効果の品種・系統および非病原性変異株間差異を明らかにする予定であったが、細胞培養系を用いた簡易検定法の開発が遅延して実験途中であるため(茎から誘導したカルスを用いて最適な検定条件を検討中)、前年度確立した抉芽を用いた簡易検定法を用いて試験を行った。その結果、品種・系統および変異株間で発病抑制効果に大きな差異が認められ、効果的な品種・系統および非病原性変異株を選抜することができた。さらに、平成28年度に行う「発病抑制メカニズムの解明」に用いる非病原性変異株として、発病抑制効果が高い菌株と低い菌株を選抜することができた。 以上より、「おおむね順調に進展している」と総合的に判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年(平成28年度)は、以下の研究を進める。 1.ジャガイモへの非病原性変異株の感染による青枯病発病抑制について、実験途中である細胞培養系を用いた簡易検定法の開発を引き続き行う。また、平成27年度に明らかにした発病抑制効果が高い菌株と低い菌株を供試して、それぞれの非病原性変異株を接種後のジャガイモの根、茎および葉において抵抗性に関連する酵素およびタンパク質を測定、比較することにより、発病抑制メカニズムを解明する。 2.「土壌への植物混和による青枯病菌の非病原化」および「非病原性変異株の感染による発病抑制」の試験で得た結果を基に、ジャガイモ青枯病の総合的管理システムを考察する。さらに、青枯病汚染土壌においてジャガイモの栽培を行い、発病抑制効果および収量性の観点からシステムの有効性を実証する。
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Causes of Carryover |
平成27年度は、細胞培養系を用いた簡易検定法の開発が遅延し、当初予定していた試薬およびプラスチック器具を一部購入しなかったこと、研究費を効率的に使用したことにより次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額(198,488円)は、細胞培養系を用いた簡易検定法の開発および発病抑制メカニズムの解明に必要な消耗品(試薬、プラスチック器具)の購入に使用予定である。
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