2015 Fiscal Year Research-status Report
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26850034
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高林 厚史 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (90546417)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 植物 / 窒素代謝 / タンパク質複合体 / 葉緑体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は植物窒素代謝の新規制御因子であるNmr1の生理的機能と制御機構を明らかにすることにある。本年度は、主に野生株とNmr1変異株における窒素応答について解析した。まず、1/2MS培地で生育させた植物体を窒素制限培地に3日間移植し、その後窒素の再投与を行ったところ、野生株では窒素投与に伴って、速やかに(2時間以内に)フェレドキシン依存的なグルタミン酸合成酵素の蓄積量が上昇し、グルタミン酸量も上昇した。一方、Nmr1変異株ではグルタミン酸合成酵素の蓄積量、グルタミン酸量の蓄積量ともに速やかな上昇は見られなかった。両植物体において葉内のグルタミン量は同程度に上昇していたことから、この結果は窒素の取り込み速度の違いを反映していたわけではないと考えられる。また、窒素の再投与に応答したフェレドキシン依存的なグルタミン酸合成酵素の転写量の変化に関しては野生株及びNmr1変異株で有意な差が見られなかった。これらの結果を従来の結果と合わせて考えると、Nmr1は細胞内窒素濃度に応答して転写後制御でフェレドキシン依存的なグルタミン酸合成酵素の蓄積量/活性を制御することが明らかになった。
次に、Nmr1変異株にシアノバクテリアのフェレドキシン依存的なグルタミン酸合成酵素(Cyano Fd-GOGAT)を導入した結果、弱光下では野生株よりも生育が良くなる傾向を示したが、十分な光の下では差が見られなかった。このシステムを利用して窒素の利用効率を上昇させられる可能性は示したが、さらなる応用のためには、Cyano Fd-GOGATの発現時期や発現量をより厳密に調節することが必要と考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野生株とNmr1変異株の生理学的な解析により、Nmr1がフェレドキシン依存的なグルタミン酸合成酵素を介して、植物の窒素代謝をタンパク質レベルで制御していることを明らかにした。このことは植物の窒素代謝を理解するうえで重要な知見であると考えている。一方で、分子レベルでの制御機構の詳細やその構造については今後の重要な課題であり、現在解析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
野生株とNmr1変異株の生理学的な解析をさらに進め、Nmr1による植物の窒素代謝の全体像を明らかにしていく予定である。また、Nmr1タンパク質複合体の構造を予測するため、単粒子解析を行い、その大まかな構造を明らかにする予定である。また、Nmr1タンパク質複合体の保存性と多様性を調べるため、様々な緑藻類や陸上植物でその構造を比較したいと考えている。
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Causes of Carryover |
一部の物品が3月に納品され、その支払いが4月になったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記理由と金額のため、次年度使用計画への影響はありません。
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