2014 Fiscal Year Research-status Report
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26850040
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
藤村 恵人 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター農業放射線研究センター, 任期付研究員 (70560639)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | セシウム / カリウム / イネ / モデル / 吸収 |
Outline of Annual Research Achievements |
東京電力福島第一原子力発電所から拡散した放射性物質による農作物汚染は未だ深刻な状況にある。カリウムの施用により玄米への放射性セシウムの移行を抑制できることが明らかとなり、水稲の生産現場では有効な対策技術としてカリウムの施用が実施されている。しかしながら、カリウムによるセシウム吸収抑制の生理学的メカニズムの詳細は不明な部分もあり、指導現場においては、経験則に基づき必要なカリウム施用量の目安を提示するにとどまっている。研究代表者らは、効率的なカリウム施用方法の確立に資するために、カリウムとセシウムがともに同じ輸送体を介してイネに取り込まれることに着目して、セシウム吸収にカリウムが及ぼす作用を定量的に表すモデル式を構築した。モデル式の構築に際して、低カリウム条件においてカリウム輸送体の発現量の増加によりカリウム吸収速度が増加することを仮説として組み込んだ。本年度はこの仮説を検証するために、低カリウム条件に晒したイネにおけるカリウム輸送体発現量の指標として、一過的なカリウム吸収量を測定する実験を行った。水耕栽培で育成した7葉期のイネに対して24時間のカリウム濃度処理(0.1ppm処理および10ppm処理)を行い、処理後のカリウムおよびセシウムの吸収速度を調査した。いずれの元素においても吸収速度は0.1ppm処理の方が10ppm処理よりも高く、低カリウム条件によりカリウムおよびセシウム吸収速度が増加することが示された。今後、カリウム濃度処理に段階を設けることにより、カリウム吸収速度が変化するカリウム濃度の閾値を明らかにする実験を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、セシウム吸収にカリウムが及ぼす作用を定量的に表すモデル式に組み込んだ仮説の検証、モデル式に含まれるパラメータ(セシウムおよびカリウムの最大吸収速度と親和性、およびカリウム吸収速度が変化するカリウム濃度の閾値)の定量、および、モデル式を利用した水田における土壌から玄米への放射性セシウムの移行の解析を目的としている。 現在までに、仮説の検証とパラメータ定量のための実験系の確立を行い、確立した実験系において仮説「低カリウム条件においてカリウム輸送体の発現量の増加によりカリウム吸収速度が増加する」の検証を行った。また、現在カリウム吸収速度が変化する閾値カリウム濃度の定量に取り組んでおり、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに確立した実験系において、カリウム吸収速度が変化するカリウム濃度の閾値を定量するとともに、閾値の品種間差の有無を検討する。また、閾値以下のカリウム濃度におけるカリウム吸収速度の増加割合の定量を試みる。次いで、最大吸収速度と親和性の定量を行う。これらについても、品種間差の有無を検討する。 玄米中の放射性セシウム濃度に年次間差および水田間差異が生じる主要因の一つとして可給態放射性セシウム濃度が考えられる。構築したモデルを用いて水田における栽培試験の結果を解析することにより、可給態放射性セシウム濃度が玄米中の放射性セシウム濃度の変動要因の一つであることを検証するとともに、モデルに組み込んでいないが影響の大きい因子の割り出しを試みる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額2932円は、研究費を効率的に使用した結果発生した残額である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究費と合わせて、研究計画遂行のために使用する。
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