2014 Fiscal Year Research-status Report
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26850043
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
尾崎 太郎 東京大学, 農学生命科学研究科, 特任助教 (40709060)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 抗生物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
放線菌Streptomyces sp. TP-A0584株の生産する二次代謝産物であるゴードスポリンの作用機構について研究を行った。これまでに、本化合物はSignal Recognition Particle (SRP)の構成蛋白質であるFfhを標的として作用することが示唆されていた。また、生産菌であるTP-A0584株は通常のFfhに加えてゴードスポリン耐性型のFfhであるGodIを有している。本年度は、TP-A0584株のFfh、およびGodIの組換え蛋白質を調製し、表面プラズモン共鳴を測定することにより、ゴードスポリンがFfhに特異的に結合すること、および同様の条件ではGodIには結合できないことを示した。また、FfhとGodIのアミノ酸配列を比較することでゴードスポリンの結合部位について推測した。それらの推測をもとにFfhとGodIのドメインスワッピングを行った変異遺伝子や部位特異的変異を導入した変異型ffh遺伝子を作製した。異種放線菌Streptomyces lividans TK23を用いてそれらの変異遺伝子のゴードスポリン耐性を評価することで、ゴードスポリンの結合部位についても知見が得られつつある。 また、ゴードスポリンによるFfhの機能阻害について構造生物学的な面から知見を得るため、Ffhとゴードスポリンの複合体の結晶構造解析も試みた。精製蛋白質とゴードスポリンを用いて結晶化実験を行ったが、蛋白質結晶を得ることはできなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に記載したように、表面プラズモン共鳴を測定することでFfhとゴードスポリンが特異的に結合することを示すことができた。また、その解離定数を算出し、その結合の強さを定量的に示すこともできた。また、ゴードスポリンは放線菌に広く作用する一方で、耐性遺伝子であるgodIを有する生産菌には作用しない。これは放線菌において保存されているFfhと、GodIの配列の違いがゴードスポリンの耐性化に寄与していることを示唆している。FfhとGodIの配列の違いをもとに絞り込んだ情報から変異型ffh遺伝子を作製した。異種放線菌Streptomyces lividans TK23を用いた実験によって各変異型遺伝子が付与するゴードスポリン耐性の有無を評価することで、ゴードスポリンの作用部位についても知見が得られつつある。以上の結果より、ゴードスポリンの作用機構の解明という点では研究が進展していると言える。結晶構造解析については蛋白質の結晶化が困難であることから進展していない。しかし、上記したようにゴードスポリンの作用部位について知見が得られつつあるため、ゴードスポリンの結合する部分構造のみを組換え蛋白質として調製することも可能となる。そのような部分構造のみの組換え蛋白質を利用することで結晶化が容易になると考えられ、結晶化については改善が期待できる。以上を総合しておおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
Ffhに存在する複数のドメインのうち、ゴードスポリンが結合すると予測されるドメインのみに切り縮めた変異型蛋白質を調製する。この変異型蛋白質とゴードスポリンが結合することを示すことで、ゴードスポリンの作用部位をより直接的に示すことが可能である。組換え蛋白質を用いたプルダウンアッセイや、平成26年度と同様に表面プラズモン共鳴を測定することにより変異体蛋白質とゴードスポリンとの相互作用を解析する。 また、このような変異型蛋白質には全長の蛋白質に含まれる余分なループ構造などが含まれない。このようなループ構造は安定な立体構造を取らず、蛋白質結晶化を妨げている可能性があるため、変異体タンパク質を利用することで結晶化実験もより容易になることが期待できる。そのため、このドメインとゴードスポリンの相互作用が検出できた後は、これを結晶構造解析にも供する。組換え蛋白質とゴードスポリンの複合体の立体構造が明らかになり、その相互作用部位等が詳細に明らかになれば、より効果的に作用するゴードスポリンの類縁体創製を目指す。ゴードスポリンはその生合成において前駆体となるペプチドの配列が、通常の蛋白質と同様に遺伝子としてコードされており、リボソームによる翻訳によって合成される。そのため、前駆体遺伝子の置換によって前駆ペプチドのアミノ酸配列を容易に置換することができる。このことを利用して、ゴードスポリンの各残基の変異体を作製し、その作用の変化を検討する。
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Research Products
(3 results)