2014 Fiscal Year Research-status Report
複合培養における放線菌二次代謝遺伝子プロモーターの活性化機構
Project/Area Number |
26850044
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浅水 俊平 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (90709057)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 放線菌 / 二次代謝活性化 / ミコール酸含有細菌 / 共培養 / 複合培養 / 抗生物質生産 / 細菌間相互作用 / 生合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミコール酸含有細菌により幅広い放線菌の二次代謝産物生産が誘導されることが見出されている。本研究では、共培養における放線菌二次代謝の活性化機構をシグナル最下流にあたる二次代謝産物生合成遺伝子の転写活性化機構に着目することで知見を得ることを試みた。ゴードスポリンの生合成遺伝子クラスターを汎用的な異種発現宿主であるStreptomyces lividansに導入した株を用いてミコール酸含有細菌との共培養を行うと、ゴードスポリンの生産量は純粋培養と比較し二倍以上になることが見出された。ゴードスポリンはリボソーム翻訳型ペプチド系化合物であることから、構造ペプチドをコードする遺伝子領域上流の非翻訳領域に、共培養に特異的な制御系が存在することが予想された。そこでまずはgodA遺伝子上流の非翻訳領域を解析した。デオキシビオラセイン生合成遺伝子(vioA-E)を、プロモーターを含むと予想される非翻訳領域の下流に連結したプラスミドを構築し、デオキシビオラセイン(紫色色素)生産量を基にしたレポーターアッセイを行った。5’及び3'側非翻訳領域の切縮め、5’-RACE法を用いて転写開始点を決定し、godA遺伝子のプロモーター領域の同定に至った。更に部位特異的変異解析によりプロモーター配列を同定し、このプロモーターが共培養時にも機能するほぼ唯一のプロモーターであることを明らかにした。-35及び-10領域が主要シグマHrdBのコンセンサス配列とよく一致した。その結果の基づき、他の構成的プロモーターを用いて、同様のレポーターアッセイを複合培養で行ったところ、godAプロモーター制御時と同様の生産量増加の傾向が確認できた。これらのことから、現在ゴードスポリンの生産量の増加は共培養時の特異的な制御因子が介在する様式ではなく、細胞機能全体の活性化が起因している可能性を推定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
godAプロモーター配列を同定した。しかしながら、その転写活性化機構には当初想定していた特異的制御因子が介在しないことが実験結果から予想され、他の転写活性化機構の可能性を現在検証中である。 共培養時特異的な転写活性化機構を解析するための二次代謝産物として、以下の材料が加わった。Streptomyces endus S-522由来のI型ポリケタイド化合物alchivemycin類に加えて、Streptomyces cinnamoneus NBRC 13823由来のインドロカルガゾールarcyriaflavin E、Streptomyces nigrescens HEK-616由来の5-Alkyl-1,2,3,4-tetrahydroquinoline類、Streptomyces sp. CJ-5由来のbutanolide化合物chojalactone類などが新たに共培養時に特異的に生産が確認される化合物として発見された。現在alchivemycin類と5-Alkyl-1,2,3,4-tetrahydroquinoline類の生合成遺伝子をドラフトゲノム中に探索している。
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Strategy for Future Research Activity |
複合培養時特異的に生産される放線菌の二次代謝産物が更にいくつか発見された。これまでに明らかになっていたalchivemycin類に加えて、arcyriaflavin E、5-Alkyl-1,2,3,4-tetrahydroquinoline類、chojalactone類などが新たに発見された。これらの化合物はその化学構造も多様であることから、生合成遺伝子クラスター構造も多様であることが推定でき、共培養時の活性化の機構が注目される。これらの生産菌の中からいくつかドラフトゲノムを解析し、生合成遺伝子クラスターを同定し、それらの化合物の生産活性化の機構を解析する。また転写解析を行うにあたり、Tsukamurella pulmonisと放線菌との複合培養系だけではなく、RNA抽出効率のより良い他のミコール酸含有菌であるRhodococcus opacus B4やRhodococcus erythropolis PR4との複合培養系も今後は使用し、より効率的に転写解析を行う予定である。
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