2014 Fiscal Year Research-status Report
二酸化炭素をエネルギー資源に変換する次世代の微生物電解合成システムの創出
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26850045
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 肇 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50549269)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 微生物電気化学的システム / メタン |
Outline of Annual Research Achievements |
・高電位における電気化学的メタン生成反応の解析:バイオカソードによる電気化学的メタン生成の反応機構を理解するために、-0.35 V (vs. SHE)での反応を詳細に解析した。-0.35 V (vs. SHE)でも電流とメタンの生産が確認され、それらは溶液中のCO2の存在に依存していることがわかった。さらにメタン生産と電流生産の直接的な関係を確認するため、-0.4 V (vs. SHE)でメタンを生産している反応系に水素資化性メタン生成の特異的阻害剤(BES)を12 mM添加した。阻害剤の添加と同時に、メタン生産と電流生産が共に阻害されたことから、バイオカソードでのメタンと電流の生産が直接的に関係していることが示唆された。 ・電気化学的メタン生成反応での電子シャトル分子の関与の検討:メタン生成活性を持つリアクターにおけるCV解析では-0.4 V(vs. SHE)付近、-0.8 V(vs. SHE)付近でピークが見られた。メタン生成が続いているリアクターのカソード槽から培養液を採取し濾過滅菌した上で、無菌的なリアクターに加えてCV解析を行った所、電流生産は検出されなかった。またバイオカソードの培養液を新たに無菌的に調整した重炭酸塩緩衝液に交換した直後でも、ほぼ同じ電位でピークが見られた。以上の結果から同反応には電子シャトル分子が関与せず電極上の直接的反応によることが示唆された。 ・バイオカソード上の微生物叢の推移の解析:培養開始後16時間と培養開始後200時間以上のバイオカソードの菌叢解析の結果、古細菌では培養時間にかかわらずMethanobacteria綱の古細菌の優占化、真正細菌では培養時間を経た後にSynergistetes、Thermotogae門の微生物種優占化が観察された。これらの微生物が電気化学的メタン生成において何らかの役割を果たしており、選択が起こった可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
好熱性バイオカソードによる電気化学的メタン生成の触媒・反応機構や触媒性微生物群に関して新たな知見を得ており、現在行っている同反応の数理モデル構築に寄与している。また性能の良いバイオカソードの構築手法を確立している。
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Strategy for Future Research Activity |
・硫化物を電子源として利用する好熱性バイオアノードの構築:高機能メタン生産バイオカソードを備えた微生物電解合成リアクターを構築し、アノード槽の培養液に微生物群を植菌する。微生物源には好熱性消化汚泥を用いる。以前の研究中、同汚泥中の好熱性菌が硫化物を嫌気的に酸化していることを示す予備知見を得ている点から、硫化物を利用する好熱性バイオアノード構築の微生物源として有望である。 硫化物をアノード槽に添加し、微生物電解合成リアクターに直流電源装置で電圧(-0.7 V)を印可しつつ半回分培養を行い、メタンと電流の生産を観測する。培養開始時は微生物の増殖のために炭素源(酢酸等)を添加する。電流とメタンが安定して生産されるようになった時点で、培地を炭素源を含まず硫化物を単一電子源とするものに交換し、半回分培養を繰り返す。電流とメタンの生産速度を指標に、硫化物の酸化により電子を放出する微生物系を集積する。 ・高温域でのメタン酸化菌を利用したメタノール生産の検討:メタン酸化菌を利用したメタノール生産は研究段階の技術であり、高温域での知見は少ない。メタン生産バイオカソードとの併用可能性を検討するために、まず好熱性メタン酸化菌種(Methylocaldum sp. T-125等)の高温域(55-65℃)でのメタンガスからのメタノール生産能を評価する。特に、メタン部分酸化反応(CH4 + O2 + 2H+ + 2e-→ CH3OH + H2O)に関して、メタン酸化菌がカソードを電子供与体として利用し、メタンを酸化する能力があるかを電解セルでの培養により検証する。
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Causes of Carryover |
大学の共用設備が使用出来たため、実験経費の一部が節約出来たため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に実施する解析の深度・規模を当初の計画よりも拡大する事により、より詳細な解析を行う。
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