2015 Fiscal Year Research-status Report
環状ペプチドPF1171類の三次元構造に着目した活性発現機構研究
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26850068
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
増田 裕一 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (90617755)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 有機化学 / 環状ペプチド / カイコ / 構造-活性相関 / 立体配座 / NMR / アポリポタンパク質B |
Outline of Annual Research Achievements |
環状ペプチドPF1171類は、カイコに対して経口投与で麻痺を引き起こし、ヒト培養細胞ではアポリポタンパク質Bの産生を抑制する。環状ペプチドは多様な立体配座を取ることから、作用機構の詳細な解明には活性立体配座を明らかにすることが重要である。本申請者はH26年度に、PF1171類の固相法を用いた全合成を達成した。さらに、X線結晶構造解析およびNMRによる三次元構造解析を行い、PF1171Fが4本の分子内水素結合を特徴とする立体配座を形成していることを明らかにした。しかし、本立体配座と活性との関連は不明である。本研究では、PF1171類の活性立体配座の解明を目的として、PF1171Fの類縁体を合成して活性を評価するだけでなく、その三次元構造を解析することにより、三次元構造-活性相関研究を行った。 これまでに確立した合成法により、23種類のPF1171F類縁体を合成した。これらの類縁体をカイコに血液注射して麻痺活性を評価するとともに、NMRによる三次元構造解析を行った。その結果、1H NMRスペクトルがPF1171Fと類似している類縁体(D-allo-Ile→D-Alaなど)では活性が維持されているのに対し、分子内水素結合の様式が変わってNMRスペクトルが異なる類縁体(D-Ala→L-Alaなど)では活性が失われる傾向が見られた。本結果は、結晶の立体配座が麻痺活性の発現に深く関わっていることを示唆している。 一方で、合成したPF1171類縁体のヒト肝癌細胞HepG2に対するアポリポタンパク質B産生抑制活性を、ELISAを用いた比色定量により評価したところ、天然物のPF1171類は50 μMの濃度でアポリポタンパク質Bの産生を40%抑制した。しかしながら、開環体やエナンチオマーも同等の抑制活性を示したことから、本活性に係る相互作用に不斉は関与しておらず、特異性が低いものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PF1171類の三次元構造-活性相関研究を行い、立体配座と活性との関連を明らかにした。本成果は、第57回 天然有機化合物討論会で口頭発表に選ばれるなど、高い評価を得ている。しかしながら、本研究成果の原著論文としての発表ができていない。また、当初計画していたPF1171類の標的タンパク質探索はほとんど進んでおらず、分子プローブの合成を始めたところである。
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Strategy for Future Research Activity |
標的分子の探索を目的としたPF1171類のプローブ化を行う。H27年度までに、側鎖に光反応基やアジドを有するアミノ酸数種の合成を完了している。H28年度は、構造-活性相関の結果を基にして、これらのアミノ酸を導入したPF1171類縁体の設計・合成を行う。続いて、カイコに対して血液注射および経口投与での麻痺活性試験を行い、活性を維持した類縁体を選択する。
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Causes of Carryover |
平成27年12月31日に東北大学薬学研究科反応制御化学分野の分野研究員を退職し、平成28年1月1日付けで三重大学大学院生物資源学研究科の准教授として赴任した。異動に伴い、旧職場における仕事の整理と新職場における研究環境の整備に膨大な時間と労力を要したため、研究を一時中断せざるを得なかった。当初の計画を完遂するために、最終年度の期間延長を申請し、研究費を残した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H27年度に合成した光反応性アミノ酸やアジドアミノ酸をPF1171類に導入し、分子プローブを合成する。合成したプローブをカイコ対して血液注射および経口投与での麻痺活性試験を行い、活性を維持した類縁体を選択する。 全ての実験は、本申請者の所属研究室の大学院生1名と協力して行う。PF1171類の合成、構造解析、カイコにおける麻痺活性の評価は、本申請者の所属大学および所属研究室が所有する設備を用いて行う。研究経費は、有機合成試薬、カイコの飼育費に充てる。また、H27年度までの研究成果を公表するため、国内学会での発表旅費および原著論文での発表費用(英文校正、論文別刷り)が必要である。
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] Foxo3a inhibitors of microbial origin, JBIR-141 and JBIR-142.2015
Author(s)
Kawahara, T., Kagaya, N., Masuda, Y., Doi, T., Izumikawa, M., Ohta, K., Hirao, A., Shin-Ya, K.
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Journal Title
Org. Lett.
Volume: 17
Pages: 5476-5479
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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