2014 Fiscal Year Research-status Report
ナノクラスター化による天然物由来高活性新規抗菌剤の開発研究
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26850074
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
榎本 賢 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 研究員 (90546342)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | クラスター効果 / 抗菌活性 / ケモセンサー / プラジマイシン |
Outline of Annual Research Achievements |
分子の多量体化とそれに伴う多点結合の形成により結合力が増強される効果を「クラスター効果」と呼ぶ。本効果を二次代謝天然物に応用し、有用物質開発研究を行っている。 当初、本研究の題材に用いる天然物としてイオノフォア抗菌物質ポリナクチンを想定していたが、研究協力者からクラスター効果による活性の増強がより一層期待できる二次代謝天然物プラジマイシンの提供が得られたので、本年度は抗真菌・抗HIV活性物質プラジマイシンを利用して研究を進めた。 プラジマイシンはカルシウムイオンを介して二量体化後、標的タンパク質のマンノース残基に結合することで生物活性を発現する。この活性発現機構と金ナノ粒子の分光学的特徴に着目することで、活性の増強された抗菌剤のみならず、マンノース認識が可能なケモセンサーの開発も可能と考えた。そこで研究協力者から提供された構造活性相関に基づいてプラジマイシンを修飾し、予備研究の知見により確立済みの金ナノ粒子修飾法を利用してプラジマイシン担持金ナノ粒子の合成に成功した。各種単糖および多糖の添加実験の結果、この金ナノ粒子はマイクロモーラーのオーダーでマンノースおよびマンノース残基を検出可能であり、マンノースを含まない糖には反応しなかった。天然物プラジマイシンそのものは糖鎖中における認識可能なマンノースの置換様式に限りがあったが、興味深いことに金ナノ粒子担持プラジマイシンは天然物では認識できない置換様式を持つ糖鎖中のマンノース残基の認識が可能であった。そこでプラジマイシン担持金ナノ粒子の結合力を測定してみると、天然物と比較して10倍強くなっていることが明らかとなった。これはクラスター効果の影響と考えられる。 以上のように、クラスター効果を利用することで天然物を凌駕する機能を備えた有用物質(マンノース認識ケモセンサー)を開発できた。今後は抗菌活性試験等を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
題材とする天然物を変更したものの天然物の活性発現機構と金ナノ粒子の特徴に着目することで、クラスター効果により天然物の機能を凌駕した機能性物質の創成を達成でき、論文発表にもつなげることができた。目標の一つである抗菌剤の開発には至っていないが、もう一方の目標であるクラスター効果の有用性を示すことができた点において、研究は順調に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに合成したプラジマイシン担持金ナノ粒子とともに、デンドリマー化したプラジマイシンを合成し、クラスター効果による抗菌活性向上の有無を検証したい。また、本来題材として想定していたイオノフォア抗菌物質ポリナクチンについてもクラスター化を行い、天然物との抗菌活性を比較する予定である。両化合物とも抗菌活性の向上が確認されたら、多量化の調節や分光学的な解析を行って結合力を明らかにし、活性向上機構の詳細を解明したい。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画よりも研究が順調に進行し、平成26年度の半ばには金ナノ粒子へ生物活性天然物を再現性良く担持する方法を確立できた。当初、担持の確認はMALDI TOF-MSにより、凝集の確認は粒径測定を依頼することにより行っていたが、担持方法の確立されたことでより迅速な方法で担持と解析を行う必要性が生じた。そこで、平成27年度予算に計上していた紫外可視吸光光度計を平成26年度中に購入するために前倒し支払い請求を行った。請求時点では実際の支払いまでにどの程度の残額が生じるか不透明であったため65万円(直接経費:50万円)の請求を行ったが、結果的に支払い時には残額に余裕があり、「次年度使用額」が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
紫外可視吸光光度計は本来平成27年度予算に計上していた物品であり、研究期間全体における予算使用予定に変更はない。従って、平成26年度に生じた「次年度使用額」は、当初の研究計画に基づき平成27年度の物品購入経費に充てる予定である。
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