2014 Fiscal Year Research-status Report
重合ポリフェノールの消化管ホルモンを介した代謝調節機構に関する研究
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26850082
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山下 陽子 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (10543796)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | インクレチン / GLP-1 / プロシアニジン / カテコールアミン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究の成果として、(1)重合ポリフェノールの消化管ホルモン分泌調節作用の解明については、平成26年度実施予定であるプロシアニジンを用いた実験動物における効果を検証した。その結果、カカオ由来プロシアニジン高含有組成物(CLPr)を投与すると、GLP-1やインスリン分泌が促進することを明らかにした。CLPrをICR雄性マウスに強制経口投与し,60分後にグルコースを経口投与することで糖負荷試験を実施した。その結果,CLPrは濃度依存的にマウスの血糖値上昇を抑制した。この時,筋肉組織においてインスリン系経路とAMPK経路の活性化を介したGLUT4の細胞膜移行を促進することが明らかとなった。また、GLP-1レセプターアンタゴニストを投与した際の検証も行ったが、さらに継続した検証が必要である。アディポサイトカインの関与については、CLPrは投与後に急性のアディポネクチン分泌促進を起こさないことが判明した。カテコールアミンの関与については、本研究室で実験系を確立するまでの条件検討を要したため、系の確立の段階でとどまっており、今後プロシアニジンの効果検証に適用する段階である。さらに、現在はGLP-1Rノックダウンマウスの作成にも着手している。なお、現時点での作用機構の仮説として、カテコールアミンなどの神経伝達物質が関与することを考えたため、本年度実施予定であった培養細胞における効果検証は実施していない。(2)の初発標的分子と活性本体の解明については、計画からやや遅れており、現時点でプロシアニジンの抗体を作成する準備に着手した段階である。その他の方策についても、至急解析を進める予定である。概ね動物実験については、計画の基盤となる方法の確立は完了したと考えており、プロシアニジンの評価を深めると同時に、平成27年度に実施予定である、他の成分(テアフラビン類)への展開も進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度実施予定の計画(1)に関しては、概ね計画通りに進展し、プロシアニジンがGLP-1分泌を促進することで、糖負荷後の血糖上昇を抑制することを明らかにした。続いて、当初の計画では培養細胞レベルにおいて、作用機構の詳細を検討する予定であったが、GLP-1分泌の促進に神経伝達物質が関与している可能性を考えたため、培養細胞での評価を変更し、動物実験における評価を進展させた。(2)に関しては、実験の進捗がやや遅れ気味であり、分子標的の探索が進まなかった。現在、プロシアニジン抗体の作成を試みている段階であり、今後早急に分子標的の探索にも注力していく予定である。以上の理由から、現在までの達成度はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)の重合ポリフェノールによる消化管ホルモン分泌作用調節の解明に関しては、プロシアニジンを用いてさらに詳細な分子機構を解明する。その方策として、消化管ホルモンの分泌に、神経伝達物質が深く関わっている可能性が、近年報告されているため、それらとの関連性について検討するとともに、現在作成中のGLP-1Rノックダウンマウスを用いた場合のプロシアニジンのインクレチン分泌効果が消失するか否かを確認する。さらに、神経伝達物質と関連していた場合には、それらの阻害剤を用いた確認も行う。上記(1)が達成されれば、(2)に掲げている初発標的分子と活性本体を捉えるためのターゲットが絞られ、その方策の最適方法が確立できると考えている。また、プロシアニジンの検証を他の重合ポリフェノールであるテアフラビンへと展開させ、標的分子と活性本体解明の糸口となる、構造活性相関について検証する。
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