2014 Fiscal Year Research-status Report
セレノプロテインP による膵臓ベータ細胞障害のメカニズム解析
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26850089
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
高部 稚子 同志社大学, 研究開発推進機構, 助教 (00436594)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 糖尿病 |
Outline of Annual Research Achievements |
セレノプロテインP (SeP)はセレン含有アミノ酸であるセレノシステインを10残基有する血漿セレンタンパク質であり、細胞にセレンを運搬する重要な役割を持つ。一方、その血中濃度と2型糖尿病との相関関係が報告されている。本年度は、膵臓β細胞由来細胞株においてSeP の長時間添加により生ずる細胞死形態の詳細な解析を目指し、in vitroでの検討を行った。糖尿病患者の血中濃度に相当するSePを培養液中に添加すると、膵臓β細胞由来細胞ではアポトーシスの指標であるcaspase-3の活性化を引き起こした。また、この系において、全caspase阻害剤であるz-VADを前処理しておくことにより細胞死の緩和が認められることから、SePは膵臓β細胞由来細胞株においてアポトーシスを引き起こしていることが示唆された。興味深いことに、血球系細胞や筋芽細胞等の他の細胞株でも同様の実験を行ったが、SePによる細胞死を示したものは膵臓β細胞由来細胞株のみであった。 アポトーシスを引き起こす量のSePと同量のセレンを含むセレノシステインによっても同様にアポトーシスが引き起こされ、更にセレノシステインによる細胞死も、SeP同様β細胞特異的であることを明らかにした。 以上のことから、SePが膵臓β細胞由来細胞において誘導するアポトーシスには、セレン元素自体が関わっている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
培養細胞を用いた系については予定通りだが、動物実験系において投与すべき大量のSeP精製に時間を要した。現在既に精製が完了していることから、今後の進展には問題がないものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
近年、糖尿病の発症と小胞体ストレスとの関与が報告されていることから、膵臓β細胞由来細胞株におけるSeP誘導性アポトーシスへの、小胞体ストレス応答の関与について検討する。具体的にはSeP添加により、小胞体ストレス時に応答を示す転写因子CHOPの誘導について検討する。また、siRNAを用いてCHOPの誘導を抑制し、細胞死に与える影響を評価する。その他、CHOP非依存的な小胞体ストレス応答経路についても検討を行う。 SePは細胞内にセレンを供給する働きを持つこと、セレノシステイン添加時においても膵臓β細胞特異的に細胞死を誘導することから、SePがセレンを供給した後にβ細胞内で生合成されるセレノプロテインについても検討を行う。 また、SePを長期投与したマウスの膵臓におけるアポトーシス誘導の有無をTUNEL法を用いて検証する。
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Causes of Carryover |
マウス投与に必要なSeP量の精製に時間を要したため、昨年度予定の動物実験が完遂できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
動物実験を当初の予定通り行う。
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Research Products
(1 results)