2015 Fiscal Year Research-status Report
森林流域における表層土壌の水分状態の空間分布に与える植物による吸水の影響評価
Project/Area Number |
26850096
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小田 智基 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (70724855)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 土壌水分 / 森林斜面 / 蒸発散 / 微生物動態 / 同位体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、森林斜面における土壌水分空間分布に対する植物による吸水特性の影響を評価することを目的とした。平成27年度は森林流域における斜面上下での表層土壌の水分状態のモニタリングを継続し、その決定要因を特定するために、斜面における樹冠遮断量の空間分布の把握、水同位体比を用いた地表面蒸発量、植物による吸水量・吸水深度の推定を行った。 その結果、樹冠遮断量は斜面上部でわずかに大きく、森林内に供給される雨量は斜面上部で小さいという結果が得られた。さらに林内に供給される水(林内雨・樹幹流)の水同位体比を計測した結果、斜面上下で林内に供給される水同位体比の差は見られなかった。斜面上部の表層土壌(0-10cm)における水同位体比は、斜面下部における表層土壌中の水同位体比に比べ大きく、それに対して、20cm以下の深さの土壌水中の水同位体比は、斜面上下で大きな差は見られなかった。この結果から、土壌表層における蒸発の影響が水同位体比の差をもたらしていると考えられる。斜面に位置によって、植物の細根量の分布、地表面蒸発量の空間分布があり、斜面スケールでの表層土壌の水分分布が形成されていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画では、森林斜面の尾根部から谷部にかけて、 森林土壌水分の空間分布形成に関与する物理プロセス(土壌物理性、森林内に供給される雨量、及び地表面蒸発)の定量化 森林土壌水分の空間分布形成に関与する生物的なプロセス(蒸散量・植物による吸水深度・細根量)の定量化 を行う予定であったが、蒸散量・吸水深度については、樹液流観測において欠測が多いことや樹体内の水同位体比のデータが不十分であり、定量化するに至っていない。また、土壌物理性・地表面蒸発の定量化についての実験を行うことができなかった。そのため、進捗はやや遅れ気味ではあるが、水同位体比をトレーサーとした解析により斜面上下での水蒸発特性に関する知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの土壌水分の連続観測を継続するとともに、今年度達成できなかった土壌物理特性把握及び、地表面蒸発量、植物の根による吸水深度の推定を行う。そのために、来年度も定期的な現地観測を行い地表面蒸発量の定量及び土壌・枝サンプルの採取を行う。また土壌透水実験を実施する必要がある。これらの得られたデータを基に、森林斜面における浸透モデルを構築し、土壌水分分布や流出の計算を行う。モデルに基づき、表層土壌の土壌水分形成要因解析を行い、土壌水分形成における植物の吸水深度の影響を評価する予定である。
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Research Products
(1 results)