2014 Fiscal Year Research-status Report
樹木分布パターンからの逆算モデルによる葉の生産・散布・分解プロセスの統合
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26850101
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
松下 通也 独立行政法人森林総合研究所, 林木育種センター, 研究員 (70624899)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 落葉分解 / 散布カーネル / 空間補間 / ベイズ推定 / 統合的モデリング |
Outline of Annual Research Achievements |
リター分解を介した林内微環境の空間的不均一性は、林分内の個体成長のばらつき等を介して森林動態に大きく影響する。本課題では、林内局所の落葉の散布・分解過程を高精度で予測可能とするための統合的モデルのうち、葉の散布過程と分解過程を空間補間的にモデリングする技術開発を目指す。 H26年度は、まず葉の生産・散布過程に影響すると考えられる各樹種の樹高や樹冠幅などの形態形質の実地測定に着手し、データを取得した。 さらに土壌養分動態の空間的不均一性の要因となりうる落葉分解過程モデル化のための基礎情報として、多樹種の落葉混合による分解試験を実行した。渓畔林内の優占8樹種の落葉を回収し、三つの混合タイプ(単一種・二種混合・六種混合)のリターバックを作成した。これら三タイプのリターバックを、林内に設置し分解速度(重量減少率)を定量した。落葉の分解速度の平均値は、三つの混合タイプ間では有意には異ならなかった。一方、分解速度の場所間のバラつき(変動係数)は混合タイプ間で異なり、六種混合、二種混合、単一種バックの順に変動係数が小さかった。続いて、リター混合による分解速度の加速的応答・減速的応答を各樹種ごとに評価した結果、単一種バックでは落葉分解速度の遅かったブナ・トチノキは、混合タイプ間で分解速度はほぼ変わらなかった。一方、イタヤカエデ・カツラは、ほかのどの5種との混合であっても、落葉分解速度は加速的応答を示した。単一種バックで分解速度の高かったサワグルミは、ブナ・トチノキとの落葉混合によって特異的に分解が遅くなった。この試験によって、葉の散布・分解過程の統合的モデリングに有用な基盤情報を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者の年度途中の所属機関異動があったものの、おおむね順調にデータを取得することができた。 落葉分解試験については、設置年度内に回収したサンプルに基づいて、樹種混合による分解速度の加減速的応答について評価が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度は、H26年度に実施した落葉分解試験の対象樹種の葉形質測定をさらに進める。対象とする形質(重量・葉面積・葉の肉厚さ・葉の硬さ等)を、シックネスゲージやプッシュプルゲージなどの計測機器を用いて測定する。 分解後の混合落葉サンプルの仕分けを実施した経験から、複数年度にわたって林内に設置したサンプルでは分解後の樹種判別が困難であろうという見通しを得られたため、H27年度は分解試験データのとりまとめを進める。 ・光学距離計と方位磁針を用いて、対象樹種の樹木個体の樹高・樹冠幅等を測定するとともに、根元位置からの樹冠の張り出し方向も記録する。 ・取得・整理した 樹木個体データと落葉トラップデータをもとに、逆算モデリングによる落葉散布カーネルの推定を進める。
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