2014 Fiscal Year Research-status Report
人為的な生息地撹乱がもたらすシカの被害強度変動パターンの解明
Project/Area Number |
26850106
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Research Institution | Research Institute of Environment, Agriculture and Fisheries, Osaka Prefecture |
Principal Investigator |
幸田 良介 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所(環境情報部、環境研究部、食の安全, その他部局等, 研究員 (60625953)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ニホンジカ / 生息密度推定 / 密度分布 / 糞塊除去法 / 安定同位体比分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は調査適地を選定するとともに、説明変数の一つであるシカ生息密度推定を行った。また、分析用にシカ糞をサンプリングするとともに、安定同位体比分析の導入可能性について検討した。 調査地の選定では、大阪府北摂地域を調査地域とし、周辺の農地面積や植林地面積、シカ生息密度にグラデーションが出るように99ヶ所の調査地を選定した。その後、各調査地に50 m×4 mのベルトトランセクトを設置し、糞塊除去法(Koda et al. 2011)によるシカ生息密度推定を行った。ベルトトランセクトは長辺が東西方向もしくは南北方向となるように設置し、できる限り様々な地形環境をカバーできるよう留意して設置した。糞塊除去法による調査では、11月上中旬にトランセクト内のシカ糞塊の除去を、12月下旬から1月上旬に新規加入糞塊数の計数を行うことで、糞消失率の影響を受けることなく精度の高い密度推定を実施した。その結果、調査地域内のシカ生息密度は0~96.2頭/km2と地域によって大きく異なること、平均密度が15.4頭/km2であることが明らかになった。これらの成果は本研究の基盤データであるだけでなく、大阪府における鳥獣被害対策にも大きく貢献できる意義深いものである。 また、農作物への餌資源としての依存度の定量評価に適した手法を検討するために、大阪府内で生産されている水稲等の農作物の安定同位体比分析を行った。その結果、自然植生の窒素同位体比が約-2‰であるのに対し、水稲では約5‰と有意に高いことが明らかになった。そのため、シカ糞の窒素同位体比の値から農作物への依存度を評価可能であることが示唆された。これらの成果は、本研究における一つの課題であった農作物への依存度の定量評価のブレイクスルーとなるものであり、研究目的達成のための今後の分析に貢献する重要な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の年次計画の通り、本年度中に、①調査地の選定、②シカ生息密度推定、③シカ糞のサンプリングと予備分析、の3点を順調に行うことができた。 調査地点数は99ヶ所と当初予定していた100ヶ所超よりやや少なくなったものの、調査地域を万遍なくカバーできるように選定できた。またシカ生息密度推定では、保全団体や国有林職員とも連携することで、糞塊除去法という精度の高い手法を用いて生息密度分布図が作成できた。加えて、密度推定と同時に効率よくシカ糞をサンプリングできたほか、安定同位体比分析から定量的に農作物への依存度を評価できる目途を立てることができた。 以上のように、現在のところ、予想された障害を順調に克服しながら、おおむね計画通りに進展できている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初の計画通り、今年度中に自然植生への被害強度の調査とシカ糞分析を、最終年度にGISによる解析と全体の統合的な解析を進めていく予定である。 なお、シカ糞分析では当初計画していた糞内残存物のDNA分析よりも、より定量性の高い安定同位体比分析による評価の目途が立ったため、安定同位体比分析を主軸として進めていく予定である。糞内残存物のDNA分析についても補完的に実施することで、農作物への依存状況を的確に把握していくことを計画している。 また、可能な限り今年度もシカ生息密度推定を行うこととし、本研究の説明変数の一つであるシカ生息密度の精度を高めていく。
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