2015 Fiscal Year Research-status Report
人為的な生息地撹乱がもたらすシカの被害強度変動パターンの解明
Project/Area Number |
26850106
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Research Institution | Research Institute of Environment, Agriculture and Fisheries, Osaka Prefecture |
Principal Investigator |
幸田 良介 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所(環境情報部、環境研究部、食の安全, その他部局等, 研究員 (60625953)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ニホンジカ / 生息密度 / 採食圧 / DNA抽出 / 安定同位体比 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、選定済の調査地にて継続的なシカ生息密度推定調査を行うとともに、自然植生への被害強度の調査として採食頻度調査を行った。また、サンプリング済のシカ糞から植物DNAの抽出を進めるとともに、安定同位体比分析を実施した。 採食頻度調査では、前年度に選定した99ヶ所の調査地にて樹高150cm以下の自然植生を種ごとに調べ、生育本数とシカによる採食痕の有無をそれぞれ記録した。その後、各調査地での採食頻度を、採食痕のみられた個体数/全生育本数として算出し、自然植生への被害強度の指標として用いた。その結果、採食頻度は概ねシカ生息密度分布と似通った分布傾向にあるものの、シカ低密度にもかかわらず高い採食頻度を示す調査地がみられるなど、シカ生息密度のみでは決まらない被害状況が明らかになった。 シカ生息密度推定は前年度にも実施しているものの、推定精度の向上を目的として同様の調査手法で今年度も実施した。その結果、平均密度で15.6頭/km2と前年度(15.4頭/km2)とほぼ同等の推定結果が得られた。 また、農作物への餌資源への依存度の評価のために、サンプリングしたシカ糞からの植物DNAの抽出と、安定同位体比分析を実施した。植物DNAの抽出は、DNeasy Plant Mini Kitを用いて行い、サンプリング済のシカ糞のうち約7割からの抽出を終えた。安定同位体比分析は、粉末状に粉砕したシカ糞をガスクロ燃焼装置付き質量分析計(Delta V advantage)で分析した。分析は京都大学生態学研究センターにて実施し、サンプルの約半数の分析を終了した。今後残りの分析を継続的に実施し、農作物への依存度を窒素同位体比等で定量評価する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、本年度中に自然植生への被害強度の調査を終了するとともに、分子解析手法による農作物への依存度の定量評価に着手できた。 野外調査では、約100ヶ所もの調査地での植生調査を達成するとともに、精度向上を目指して今年度にもシカ生息密度推定調査とシカ糞のサンプリングを実施できた。 分子解析では、分析終了サンプル割合は当初予定の7割には満たないものの、当初予定した倍近いサンプル数を対象に、植物DNAの抽出と安定同位体比分析という2種類の手法を併用して、半数以上のサンプルの分析を終了できた。 以上のように、翌年度に実施する必要のある分析点数は予定より多くなったものの、当初予定以上の野外調査や分析を実施しており、全体としておおむね順調に進展できている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は残るサンプルの安定同位体比分析及びDNA分析を終えるとともに、当初の予定通りGISを用いた人為的な生息地撹乱強度の定量化と、GLMMによる統合的な解析を行う予定である。
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