2015 Fiscal Year Research-status Report
13C同位体標識リグニンを用いた化学構造と酵素分解の反応速度論的解析
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26850109
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
米田 夕子 静岡大学, 農学部, 助教 (90638595)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | リグニン / 13C同位体 / NMR |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高分子リグニンを有用な低分子芳香族化合物へ資源化する際に、最も基礎的知見となるリグニンオリゴマーの分解機構を解明する。特に、環境負荷の小さい方法である酵素を用いた分解反応とリグニン化学構造との相関性を反応速度論に基づき明らかにする。リグニンオリゴマーの特定部位を13C同位体標識したモデル化合物を酵素処理し、その過程をNMR法にて追跡し、反応機序を明らかにする。 本年度は、はじめに、昨年度に確立した合成法に従い、13C同位体標識リグニンモデル化合物の調製をグラムスケールで行った。得られた標的化合物、プロピル鎖の3つの炭素が13C同位体標識されたリグニンモデル化合物(bO4-1)、の酢酸-13C2からの総収率は36%であった。 次に、研究計画の通り、酵素処理反応をNMR法にて観察した。リグニンを分解する酵素には、ラッカーゼ、マンガンペルオキシダーゼなどの白色腐朽菌から分泌される菌体外酵素が知られている。これら酵素はメディエーターを介しリグニンを一電子酸化し、酸化されたリグニンは電子が分子内転移することにより分解される。調製した13C同位体標識リグニンモデル化合物を基質とし、酵素にラッカーゼ、メディエーターに1-ヒドロキシベンゾトリアゾールを用い酵素処理反応を行った。反応開始直後から経時的に反応液を採取し、これを直接NMR測定した。当初の目論見通り、反応液中の基質由来の13C同位体標識炭素シグナルを明瞭に観察することができ、基質の複数の分解部位を明らかにするとともに、各々の分解速度を測定することに成功した。さらに、NMRスペクトルにおいて炭素-炭素結合に起因するシグナルの分裂の消失を確認した。これはプロピル鎖でのリグニンオリゴマーの分解を示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酵素処理中の基質および反応生成物をNMR法にて直接的に観測する方法を確立した。反応を経時的に追跡することが可能となり、反応機構を解明するためのデータが得られた。これにより、高分子リグニンの有用資源化に必須となる低分子化反応の反応部位とその反応速度を明らかにできたため。
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Strategy for Future Research Activity |
NMR測定により得られたデータを詳細に解析し、リグニンオリゴマーの酵素処理反応の速度論的解析を行う。
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Causes of Carryover |
研究成果をまとめ論文投稿を予定していたものの使用しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文投稿に関わる費用として使用する。
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