2014 Fiscal Year Research-status Report
超広帯域マルチ分光計測による古材の表層・内部材質評価手法の確立
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26850111
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
稲垣 哲也 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (70612878)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 反応速度論 / 近赤外分光法 / 木材熱処理劣化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、古材の材質を超広帯域マルチ分光計測(X線透過法・近赤外分光法・赤外分光法およびテラヘルツ時間領域分光法)により横断的に評価する計測アプローチを提案することにある。これにより古材の経年に伴う、結晶構造・化学成分・細胞構造変化およびそれらの空間分布を評価することができる。木材表層を赤外(分子振動情報)、浅層を近赤外(分子振動情報)、中層をテラヘルツ領域(複屈折性・屈折率)、深層をX線領域(密度)電磁波によって評価し、これらを統合することで木材の光劣化・酸化・加水分解反応の評価が可能となる。 この端緒として本年は乾燥状態で90,120,150,180度で熱処理を施したスギ試料の近赤外スペクトルを測定した。得られた近赤外スペクトルに主成分分析を施し、主成分スコアを得た。これらの結果を熱力学的に解析することを試みた。主成分スコアをロジスティック関数によってフィッティングした。熱処理時間、各種フィッティング係数およびシフトファクターを導入することにより、熱処理温度が異なっても同じ式を用いて説明できることが示された。温度の逆数とシフトファクターの対数値との決定係数が0.9990と非常に高いことから、近赤外スペクトルから算出されたPC2スコアは反応速度論的に解析できることが分かった。また、木材の主成分であるセルロース・リグニン・ヘミセルロース由来の吸収ピークにおける二次微分値も同様に解析できることが分かった。各温度におけるシフトファクターと、熱処理温度の逆数の関係から活性化エネルギーを算出したところ、PC2スコアでは120.94kJ/molであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験・解析ともに当初の計画通り研究が進行している。 またこれら結果を国内学会(近赤外研究会)で発表している。 さらに本研究の成果を投稿論文として準備中である。 これらのことから、研究は順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度の研究成果により、劣化木材のスペクトル情報に熱力学的解析を適応できることが示された。また、異なる熱処理温度で処理した木材をシフトファクターを導入した同様の式で説明できることが示された。 27年度はさらに、各種劣化木材のテラヘルツ時間領域スペクトル測定および赤外ATR測定を行う。これにより、木材表層を赤外(分子振動情報)、浅層を近赤外(分子振動情報)、中層をテラヘルツ領域(複屈折性・屈折率)、深層をX線領域(密度)電磁波によって評価できる。これらを統合することで木材の光劣化・酸化・加水分解反応の評価が可能となる。また、熱処理と光劣化を複合的に処理した木材を用いて、同様の測定・解析を行う。
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