2014 Fiscal Year Research-status Report
リグニンコンポジットナノファイバーを原料とするカーボンナノファイバーの開発
Project/Area Number |
26850112
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
吾郷 万里子 徳島文理大学, 理工学部, 講師 (90389172)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | リグニン / エレクトロスピニング / カーボンファイバー / ナノファイバー |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の目的は,セルロースに次ぐバイオマス生産量を誇るリグニンを原料とした,経済的で適用範囲の広いカーボンナノファイバーの開発である.リグニンは天然からの莫大な生産量を誇るだけでなく,炭素含有量が高いため高収率で炭化物得られ,また芳香族性の高分子であるという構造的特徴も炭素材料の前駆体としては有利な原料である. 平成26年度は,前駆体となるリグニンを主成分としたナノファイバーを作製すること.また,異なる成分比のリグニンナノファイバーを作製し,続く熱処理に対して,成分組成がどのように影響するのかを調査し,適切な熱処理条件を明らかにする. ここでは,リグニン75%,PVA25%を含むファイバーをエレクトロスピニング法によって作製した.得られたファイバーの平均繊維径は67nmであった.ついで,昇温速度4oC/min,250oCまで昇温したのち,一定時間保持し,さらに600または1000oCまで昇温して炭化物を得た.250oCでの保持時間は,0から60分の間で設定した.また同様な熱処理を,セルロースナノクリスタルを含有するファイバーにも適用した.これらの実験より,以下のことが明らかとなった.収率は最も高いもので,48%(600oC),最も低いもので11%(1000oC)となった.250oCでの保持時間は,長いほうがより高収率で炭化物が得られた.またセルロースナノクリスタルを含有したファイバーを炭化すると未含有のものより,収率が低下した.いずれのサンプルも元の繊維形態を維持しており,繊維径もほぼ維持してしていることが示された.各炭化後のラマンスペクトルより,グラファイト構造を有する炭化物が得られたことが確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,エレクトロスピニング法によって,各種リグニンファイバーが得られた.また,成分組成の異なるファイバーに対する熱処理の検討により,成分組成と生成物の相関に対する影響も概ね明らかになりつつある.また分光法によって,炭化物の化学的な構造も明らかになったことから,概ね順調に進展しているといえる.ただし,再現性の確認や,最適条件の決定には至ってなのいので,H27年度は本結果の再現性を確認するとともに,さらに詳細な構造解析を行い,物性との関連を明らかにする必要がある.炭化装置の性能に問題があったため,ハード面の改善を図る.
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度,研究代表者である吾郷は,フィンランドに海外研修することとなり,本研究へのエフォートが低下する可能性があるので,とくに現地と日本との連絡を密にとり,効率的に研究課題を推進していくことにしている.しかしながら当初予定よりも若干の遅れが生じるかもしれない.具体的な内容は以下のとおり.1.炭化装置の改善,1)機密性を高める(窒素雰囲気下が十分に達成されていない可能性がある),2)温度コントローラーの精度を高める(交換が必要かもしれない);2.H26年度実施したサンプルの再現性を確認する;3.形態,化学構造の解析および電気特性,力学特性の調査;3.海外の動向調査;4.炭化物の形態について,ファイバーに加え,粒子(ナノパーティクル)についても検討を開始する,
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Causes of Carryover |
当初計画していた海外出張が取りやめになったため,支出予定額を下回った.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H27年度の旅費として計上する.
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