2014 Fiscal Year Research-status Report
沿岸域の海藻群落・海草群落における小型底生動物の簡便な種判別手法の開発
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26850116
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
早川 淳 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (10706427)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 貝類相 / 甲殻類相 / 種判別手法 / モニタリング |
Outline of Annual Research Achievements |
26年度は親潮流域の岩手県沿岸(大槌湾)および宮城県牡鹿半島沿岸(泊浜)、黒潮流域の神奈川県三浦半島西岸(長井)、熱帯域の沖縄県石垣島沿岸(名蔵湾)において潜水調査を実施し、多数の底生動物サンプルを得た。比較的頻繁に調査を実施することができた大槌湾では、貝類サンプルが十分に集積されており、種によっては種同定が現在困難なサイズである貝類稚貝から種同定が可能なサイズの成貝まで連続標本が完成しつつある。エゾアワビと餌料を巡って競合関係にあるエゾザンショウと、形態が非常に近似するヤマザンショウの識別については、貝殻の彫刻によって稚貝期の種判別が可能になる可能性が示唆された。また、大槌湾は過去に貝類相の研究が為されているが、これまで大槌湾での出現が確認されていなかった種が本研究によって十数種確認された。また、ニシキウズガイ科の未記載種も採集された。ハビタットによる出現状況も記録されており、生物相モニタリングに供する資料として重要であると考える。 名蔵湾での調査では、未記載種もしくは日本初記録の貝類・甲殻類が複数種採集され、種判別手法の確立以前に出現する種の記録・記載が重要となると考えられた。泊浜および長井においても今後調査を継続し、貝類・甲殻類を中心としたサンプルの蓄積を重ねる予定である。 ウニ類の稚仔についても特に大槌湾と泊浜で実施しているが、稚ウニの出現するハビタットが本年度では特定できなかった。今後、調査手法・サンプル集積について検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
各調査地点において未記載種が想定以上に出現したことから、種判別手法の開発以前に貝類相・甲殻類相の整理を行う必要が生じた。また、連続標本の作製において、着底直後の稚仔を採集する必要があるが、種によっては稚仔のハビタットや出現時期の特定が進んでおらず、今年度に推定された判別形式が種同定に確実に用いられるか決定できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
主要な調査海域である4地点において、引き続き採集調査を実施し、貝類・甲殻類・ウニ類のサンプルを集積し、各種の連続標本を作製する。また、未記載種の記載を進め、各地の貝類相・甲殻類相を新たに整理し、論文として公表する。各種のハビタットに関する情報も集積し、生物相モニタリングにとってより利便性の高い、簡易な図鑑の作成を目指す。 また、次年度には申請者の所属する沿岸センターの飼育実験施設が稼働するため、この施設を用い、長期飼育による外部形態の成長に伴う変化の確認を行う。
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Causes of Carryover |
謝金を用いて標本撮影等を依頼する予定の相手が兼業不可の研究プロジェクトで雇用されたため、使用することがなかった。また、当初の研究計画通り、申請者が担当している他の研究課題での野外調査と同時に標本採集を実施したため、旅費の支出が抑えられたことも次年度使用額が生じた理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費については野外調査の必要な機材および標本の整理・撮影に必要な物品の更新および補充に引き続き使用する。また、謝金・人件費については、本研究課題に必要となる標本の写真撮影を依頼する予定があり、計画通りに執行できるものと考えている。
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