2015 Fiscal Year Research-status Report
卵数法による資源量推定にむけた駿河湾産サクラエビの産卵特性の解明
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26850118
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
土井 航 東海大学, 海洋学部, 講師 (70456325)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | サクラエビ / 産卵予測 / 産卵履歴 / バッチ産卵数 / 最終成熟卵 / 産卵頻度 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の研究において、サクラエビの卵巣の色彩によって個体の産卵可能性が評価できると推測された。このときのサンプル数は約30と限られたものであったため、平成27年度はより多数の個体について、卵巣色彩の定性分類とデジタル画像解析、卵巣の組織学的観察を行い、卵巣の色彩に基づく成熟段階判別の精度向上を主な目的に研究を行った。平成27年6月から10月に駿河湾の200 m等深線上付近において、調査船によって約2000個体の雌サクラエビの成体を採集した。卵巣の色彩を平成26年度同様に、定性的に淡青灰、濃青灰、緑青灰の3段階に分類し、最も発達段階が進んだ卵母細胞をもつ個体の割合を調べた。その結果、青灰色に緑色の要素が入った緑青灰色の卵巣をもつ個体は、すべてが産卵直前と思われる最終成熟卵を有していた。また、中間色の濃青灰の個体では、約半数が最終成熟卵を持っていたのに対し、淡青灰の個体で最終成熟卵をもつ個体はいなかった。これらの定性分類の結果と、組織観察の結果は、卵巣色彩のデジタル画像解析によっても支持されたことから、後半の調査では研究室と船上で撮影された画像をもとに、定性分類を行い、天然海域における産卵頻度(当日産卵個体の割合)の算出に応用した。 このほか、サクラエビ漁業および調査船調査によって採集された産卵期前半の標本の組織観察を進め、平成26年度に明らかにした「産卵直後」および「産卵期終了後」の卵巣組織像をもとに、天然海域における本種の産卵動態についての研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では大きく3つの目的を掲げている。それぞれの達成度を以下のように自己点検し、その平均から全体の達成度を2と評価した。 【目的1】最終成熟卵を指標に用いた個体の産卵予測・排卵後濾胞を指標に用いた個体の産卵履歴の推定、については、すでに平成26年度の研究によって目的を達成することができ、平成27年度はその成果に基いて卵巣組織の観察を行った。 【目的2】目的1の結果を天然個体群に応用し、産卵頻度・初産・経産個体の出現率の季節的変化を推定する|初産・経産の判別は平成26年度の段階では困難と結論づけられた。一方、産卵頻度に関しては、卵巣の色彩を基に多数の個体を迅速に評価できることが明らかになり、本研究による成果を漁業・資源管理の現場で応用する目処がついたと思われる。 【目的3】バッチ産卵数の推定|昨年度の段階で173個体分のバッチ産卵数のデータを得ることができた。その要因を検討するために、一般化線形モデルによる解析などが必要である。これは、まだ実施できていない。 以上より、目的1と2の達成度は高いものの、目的3は研究に遅れが生じていることから、全体としては区分2であると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は概ね計画通りに進行していることから、平成28年度も当初の方策のまま推進する。今年度は、これまでの研究を継続するとともに、成果を公表する。 研究面では卵巣色彩による成熟個体の判別を応用し、駿河湾内の異なる海域で採集されたより多くのサンプルについて、産卵頻度を調べる。その精度を確認するために、組織観察を平行して行う。 成果公表に関しては、これまで学会発表に留まっていたものを、論文として公表する。
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