2016 Fiscal Year Research-status Report
卵数法による資源量推定にむけた駿河湾産サクラエビの産卵特性の解明
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26850118
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
土井 航 東海大学, 海洋学部, 講師 (70456325)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | サクラエビ / 産卵予測 / 産卵履歴 / バッチ産卵数 / 最終成熟卵 / 産卵頻度 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は1件の論文を発表した。平成29年度における論文投稿原稿の作成および必要なデータ解析を行った。 平成27年度までに明らかにすることができた、サクラエビの卵巣色の発達と、卵巣内の卵母細胞の成熟の関係について、色彩の定性分類とデジタルデータ解析、卵巣の組織学的観察を行った結果を取りまとめ、日本水産学会誌83巻2号で発表した。これにより、サクラエビの雌を、その卵巣の外見的特徴のみに基いた簡便な手法によって、産卵が数日以内に近づいた成熟雌とそうではない成熟雌にわけることが可能になった。 平成27年度までに実施した、船上におけるサクラエビの産卵実験の結果の解析を行った。バッチ産卵数については、実験日ごとの変動が大きかったことから、調査船による採集の対象になった群れを構成する個体の繁殖経験や経験水温が群れごとに異なっていたためと、推測された。また、産卵時刻の結果について、生存時間解析を行った。これらの結果は、同じ実験により明らかになった、産卵前後の組織像の結果とともに、論文投稿予定である。サクラエビのバッチ産卵数は、卵数法における資源評価において重要なパラメータであるが、バッチ産卵数は大きくは雌の体サイズにより決定されるものの、それ以外の要因にも大きく左右することがわかった。 過去3年分の繁殖期から繁殖期終了後を通じて採集された雌の卵巣の組織学的観察を行い、産卵前の成熟雌および産卵後の雌の割合を求め、結果を得ることができた。組織観察の結果は、上述の卵巣色によって求めた成熟雌の成熟段階の割合と一致していたことから、同手法の有効性を確認することができた。また、繁殖期後のとくに冬期には、繁殖期中の卵巣とは異なる形態を示す個体の割合が増加したことから、そのような卵巣をもつ雌の活性や、春季以降の産卵の可能性について検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で掲げた3つの主な目的について、それぞれの達成度を以下のように自己点検し、その平均から全体の達成度を2と評価した。 【目的1】最終成熟卵を指標に用いた個体の産卵予測と、排卵後濾胞を指標に用いた個体の産卵履歴の推定:平成26年度にすでに目的を達成することができ、平成28年度はその成果の一部を論文として公表した。 【目的2】目的1の結果の天然個体群への応用により、産卵頻度・初産・経産個体の出現率の季節的変化を推定:初産・経産個体の判別は平成26年度の段階で困難であるとの結論に達した。一方、産卵頻度については、卵巣の色彩に基いて多数の個体を迅速に評価することができるようになり、その成果を論文として公表できた。 【目的3】バッチ産卵数の推定:平成27年度までに得られたバッチ産卵数と体長に関するデータについて、統計解析を行った結果、その変動要因として、体長以外にも採集日が重要であることが示された。この結果については、平成28年度以内に論文投稿を行う予定であったが、解析方法の修得に時間を要し、達成することができなかった。 以上より、目的1、2は当初の予定通りに達成できているが、目的3には遅れが生じており、全体では区分2であると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、以下の論文投稿を行い、成果を公表する。(1) 繁殖期から繁殖終了後のサクラエビの雌を卵巣の組織学的特徴に基いて成熟、最終成熟、産卵後に判別し、それを基に、サクラエビの産卵頻度、産卵の季節的周期性と生涯の産卵回数を推定した結果について。(2) 産卵実験により明らかにした、バッチ産卵数、産卵前後の卵巣組織像、産卵時刻の周期性について。なお、バッチ産卵数と産卵時刻は、今年度も新たに実験を行い、データを追加する予定である。
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