2014 Fiscal Year Research-status Report
魚類ノカルジア症菌の病原遺伝子ノックアウト株の弱毒生ワクチンとしての有効性の検証
Project/Area Number |
26850124
|
Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
今城 雅之 高知大学, 自然科学系, 講師 (20565741)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | ドラフトゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
Nocardia seriolaeの病原遺伝子ノックアウト株を利用した弱毒生ワクチンは、従来の水産用ワクチンで汎用されるホルマリン不活化ワクチンでは予防できなかったノカルジア症に対し、高い感染防御効果を示すことが期待できる。本年度は本菌の病原因子の候補遺伝子を選抜するため、N-2927株(2007年高知県の養殖ブリ腎臓由来の分離株)、及びU-1株(2011年鹿児島県の養殖ブリ腎臓由来の分離株)のゲノムDNAの塩基配列を次世代シーケンサーで解読して、ドラフトゲノムの構築を行った。ロシュ 454 GS Juniorを用いてシーケンス解析を行い、N-2927株では167,713リード、U-1株では166,544リードがそれぞれ得られ、NCBIのSRA(Sequence Read Archive)データベースのIlluminaリードと合わせてde novoアセンブリを行い、Microbial Genome Annotation Pipeline(http://www.migap.org/)で遺伝子のアノテーションを実施した。N-2927株、及びU-1株の重複のない配列の総和は7,758,286 bp、及び7,728,498 bpであり、7,531個、及び7, 777個の遺伝子候補、3個のrRNA遺伝子、63個のtRNA遺伝子がそれぞれ予測された。両株間、及びNocardia farcinicaの全ゲノム配列との比較ゲノム解析から、細胞侵入因子であるmce遺伝子、シデロフォアの一つであるノコバクチンの生合成遺伝子、ポリケチド産生に関わるポリケチド合成酵素遺伝子らをノックアウトの標的候補遺伝子として見出すことができた。現在、これらの遺伝子領域のノックアウト株を作出している段階にある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次世代シーケンサーを用いて決定したN-2927株ゲノムとU-1株ゲノムのドラフト配列を元に、比較ゲノム解析によって病原因子の候補遺伝子を見つけ、ノックアウト株の作出に必要な情報を得ることができた。現在はこれらの遺伝子を標的としたノックアウト株を作出している。まだ、ノックアウト株の弱毒化について検証するには至っていないが、近縁種のマイコバクテリウム属のMycobacterium tuberculosisのmceオペロンを変異させることで病原性が弱まること、さらにその変異体がワクチンとして高い感染防御効果を示すことが報告されている。このことから、mce遺伝子のノックアウト株が弱毒生ワクチンとして有用であることが期待される。N-2927株のドラフトゲノムに関する研究成果はGenome Announcementsに受理されデータベース上に公開した。以上のことから達成度はおおむね順調であると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度研究では、Nocardia seriolaeのmce遺伝子、ノコバクチン生合成遺伝子、及びポリケチド合成酵素遺伝子を病原因子の候補遺伝子として見出した。そこで本年度以降では、1)病原遺伝子ノックアウト株の作出、2)弱毒生ワクチン候補の選抜、3)弱毒生ワクチン候補の感染防御効果の評価を実施していく予定である。具体的には、1)については、TargeTronシステムを用いて病原因子の候補遺伝子を破壊する方法で前年度から引き続き行っていく。2)については、ブリ当歳魚を用いた感染試験によってノックアウト株の病原性を累積死亡率の結果から評価していく。3)については、弱毒生ワクチン候補のノックアウト株をブリ当歳魚の腹腔内に注射して投与し、一定の免疫誘導期間を経て感染実験を実施する。感染期間内には各臓器の菌数の増減変動、各免疫関連遺伝子の発現量、凝集抗体価の推移、累積死亡率などを明らかにし、最終的に総括して弱毒生ワクチン候補の感染防御効果の評価を行っていく。もし、2)においてノックアウト株が弱毒化しない、または、3)において一定の感染防御効果が認められないなどの場合は、初年度で明らかにしたドラフトゲノム情報を元に、これまでほとんど知られていないNocardia seriolaeの病原性の解明に努めていく。
|
Causes of Carryover |
初年度の研究成果の発表を平成27年度日本魚病学会春季大会で行う予定であったが、50周年記念シンポジウムで口頭発表がなく次年度に行うこととしたため、未使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
このため、初年度の研究成果は次年度と合わせて発表することとし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
|
Research Products
(1 results)