2015 Fiscal Year Research-status Report
魚類ノカルジア症菌の病原遺伝子ノックアウト株の弱毒生ワクチンとしての有効性の検証
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26850124
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
今城 雅之 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 講師 (20565741)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Nocardia seriolae / ブリ / リアルタイムPCR法 / 体内動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では、リアルタイムPCR法によるNocardia seriolae定量法を開発し、本菌の体内動態を解析した。さらに、同手法によるワクチン評価の有用性を検証するため、ダイメトンソーダの投薬効果を評価した。 供試魚には平均魚体重48.8gのブリ当歳魚、供試菌株にはN-2927株を用いた。実験1では、3.1×105 CFU/ml濃度の菌液にブリを10分間浸漬させ、経時的に回収した感染魚と死亡魚から9組織と末梢血を採取し、DNA抽出後、SYBR greenリアルタイムPCR法でN. seriolaeの16S rRNA遺伝子のコピー数を定量した。浸漬感染によるブリの病変は既知のノカルジア症の特徴と一致した。感染区の累積死亡率は感染13日後で100%に達し、対照区では26日間で0%となった。16S rRNA遺伝子のコピー数は、感染3日後に腎臓と脾臓で他組織と比べて高くなり、感染7日後に全ての組織で死亡魚と同程度のコピー数に達した。実験2では、1.0×106 CFU/ml濃度の菌液にブリを10分間浸漬させ、感染1日後、3日後、または5日後にダイメトンソーダを20mg/尾または200mg/尾になるようドライペレットに混ぜ、1回/日で3日間経口投与した。投薬終了7日後に回収した感染魚を実験1と同様にリアルタイムPCR法に供した。無投薬区の累積死亡率は29日間で66.7%であったのに対し、感染1日後、3日後、5日後の20mg投薬区で6.7%、20.0%、0%、感染1日後、3日後、5日後の200mg投薬区で0%、6.7%、6.7%となり、どの投薬区でも死亡率は低減した。16S rRNA遺伝子のコピー数は、感染1日後の200mg投薬区の脾臓、及び感染3日後の200mg投薬区の脾臓と心臓で20mg投薬区よりも優位に低くなり、感染の早期かつ高濃度の投薬で特に脾臓での菌数が抑制される傾向にあった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一年目では、次世代シーケンサーを用いて決定したN-2927株とU-1株ゲノムのドラフト配列を元に、比較ゲノム解析によって病原因子の候補遺伝子を見つけ、ノックアウト株の作出に必要な情報を得ることができた。N-2927株とU-1株のドラフトゲノムに関する研究成果は学術論文のGenome Announcementsに受理され、それらの遺伝子情報をGenBank上に公開している。二年目では、リアルタイムPCR法によるN. seriolaeの高感度定量法を開発し、浸漬感染により低菌数から本菌の体内動態を遺伝子レベルで明らかにすることができ、かつ、自然感染に近い感染様式でノカルジア症の再現が可能であることを確認した。また、本手法をワクチン効果の評価へ応用すべく、水産用医薬品の投与効果を評価して、その有用性を立証することができた。この研究成果は、高知大学学術研究報告に投稿予定である。以上のことから、達成度はおおむね順調であると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度では、初年度で明らかにした病原因子の候補遺伝子である細胞侵入因子のmce遺伝子、シデロフォアの一つのノコバクチンの生合成遺伝子、ポリケチド産生に関わるポリケチド合成酵素遺伝子をターゲットとしてノックアウト株を作出し、それらを弱毒生ワクチン候補として選抜して、感染防御効果の評価を実施していく。もし、ノックアウト株が弱毒化しない、ワクチンとして一定の感染防御効果が認められないなどの場合は、初年度で明らかにしたドラフトゲノム情報をもとに、これまでほとんど知られていないNocardia seriolaeの病原性の解明に努めていく。
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