2014 Fiscal Year Research-status Report
魚類の左右非対称性形成機構の解明:なぜ異体類にはオモテとウラができるのか?
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26850127
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
宇治 督 独立行政法人水産総合研究センター, その他部局等, 研究員 (40372049)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 周年採卵 / ヒラメ・カレイ類 / ササウシノシタ / 左右性 / 形態異常 / ゲノム編集 / モデル生物 / 異体類 |
Outline of Annual Research Achievements |
人為的な低水温刺激と短日化により、通常は産卵しない冬に産卵可能かを調べた。500リットルの水槽を用い10月1日から短日化および低温処理(10L14D, 15℃)への移行を開始し、2ヶ月間低温、短日処理を行った後、1月1日から長日化および高温条件(16L4D, 22℃)への移行を開始した。コントロール区は、自然日長、自然水温の条件で飼育を行った。その結果、短日・低温処理を行った試験区においてのみ1月中からの採卵が観察された。このことにより、ササウシノシタで周年受精卵を得ることが事実上可能になったと考えられる。 全長約2cmのササウシノシタ稚魚1個体から内臓を取り除き、ゲノムを抽出した。抽出したゲノムを用いてHiseq 2000シーケンサーでシーケンスを行った。その結果、全ゲノムサイズのおおよぼ150×に相当する約75Gbのゲノム情報を得ることができた。 CRISPR/Cas9 システムによるゲノム編集技術を確立するためには、ササウシノシタでマイクロインジェクション法を開発しなければならない。今年度は、受精卵の固定方法、インジェクション用針の最適化、受精卵のリンガー液の最適化を行った。その結果、受精卵の固定はピペットマンの200ulのチップの先をカットして吸引して固定する方法が効率よくインジェクションできること、インジェクション用の針はナリシゲ製プラーPC-10のHeater level 80重り250gの設定で作成した針がもっとも卵の生残率がよいことがわかった。またリンガー液について、培養液にアルブミンやポリエチレングルコールなどを濃度を変えて添加し生残率を比較する実験を行ったが生残率の向上は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデル生物として扱うには、周年安定して個体を維持し、周年受精卵を得られるように飼育条件を最適化することは不可欠である。今回、通常は産卵しない1月からの採卵に成功したことから、ササウシノシタで周年を通じて受精卵を得ることが事実上可能になった。またゲノム情報もゲノムサイズの約150×というゲノム編集を行う上で十分量のゲノム情報を得ることができた。また顕微注入技術の最適化についても受精卵の固定法、インジェクション用針の材質を含めた最適化、受精卵のリンガー液の検討を行い、インジェクションして体節期まで正常に発生することを確認しており、顕微注入技術は開発されたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
人為的な低水温刺激と短日化により、通常は産卵しない冬に産卵可能であることを示したので、次年度は成熟の開始に低水温または短日のどちらが必要かあるいは両方が必要かを検討する。この実験によって、低水温のみ、もしくは短日のみの環境制御によって冬期に早期産卵が可能かが明らかになり、より効率的に周年採卵できるようにする。 前年度得られたゲノム情報からnodal, lefty, pitx2などヒラメで左右性に関与することが分かっている遺伝子を同定すると同時に、ササウシノシタ胚、仔魚のcDNAライブラリーを作成し、左右性に関わる遺伝子の単離と同定を行う。ゲノム編集技術CRISPR Cas9システムを用いて左右性に関与する遺伝子群、特にnodal, lefty, pitx2の遺伝子機能欠損ササウシノシタを作製し、成魚まで個別飼育する。
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Research Products
(5 results)