2015 Fiscal Year Research-status Report
魚類の左右非対称性形成機構の解明:なぜ異体類にはオモテとウラができるのか?
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26850127
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Research Institution | Japan Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
宇治 督 国立研究開発法人水産総合研究センター, その他部局等, 研究員 (40372049)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 周年採卵 / ササウシノシタ / ヒラメ・カレイ類 / 左右性 / 形態異常 / 異体類 |
Outline of Annual Research Achievements |
ササウシノシタの成熟の開始に低水温または短日のどちらが必要かあるいは両方が必要かを検討することを目的に実験を行った。コントロール群では周年自然水温自然日長で採卵を行った。試験区1では、夏期に2ヶ月の16℃の低水温処理のみ、試験区2では夏期に2ヶ月の短日処理のみ、試験区3では2ヶ月の低水温と短日両方の処理を行った。その後12月から徐々に長日、22度の環境条件に移行し、産卵を試みた。その結果、1月から3月までの1日当たりの産卵量について、試験区3の低水温、短日両方の処理を行った区で最も産卵量が多く、続いて、試験区1の低水温処理のみを行った区、続いて試験区2の短日処理のみを行った区、そして無処理区の順となった。このことからササウシノシタでは短日および低温両要因とも成熟を促す要因であること、短日よりも低温がより成熟を促すこと、そして短日と低温は相加的に成熟に影響を及ぼすことが示唆された。 ササウシノシタ胚のトランスクリプトーム解析を行い、前年度得られていたゲノム情報と合わせて左右性関連遺伝子の単離を行った。その結果、ヒラメの左右形成に関与することがわかっているnodal, lefty,pitx2の配列を単離した。またその他に同様に左右成形性に関与することが知られているpolycystic kidney disease 2(pkd2)も単離することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ササウシノシタをモデル生物として扱うには、周年安定して個体を維持し、周年受精卵を得られるように飼育条件を最適化することが不可欠である。今年度、ササウシノシタにおいて低水温刺激と短日化処理を両方行うことがもっとも産卵量を増加させることを明らかにした。このことによりほぼ周年採卵技術は完成した。また異体類の左右成形性形成に関連するとみられるpitx2, lefty, nodal, pkd2を単離することができた。現在、周年採卵技術開発においてまだ産卵が続いており引き続きデータを取得しているため、ゲノム編集技術開発がスタートできていないが、新たにササウシは飼育条件によっては8ヶ月程度で成熟することがわかっているので十分当初の目標達成可能である。このことにより、当初の計画通り進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験からササウシノシタにおいて周年採卵が可能となった。今後はさらにその技術を高度化するため、ビタミンAによる採卵量の増加を試みる。また左右性関連遺伝子の発現解析およびゲノム編集による左右性関連遺伝子の機能解析も進めていく。
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Causes of Carryover |
周年採卵実験が当初の予定よりうまくいき、いまだに採卵が続いておりデータを取得し続けている。そのため、ゲノム編集に関わる一部分が次年度にわずかにズレこむことが生じたためにその分を次年度の解析に用いることにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ゲノム編集を行うための試薬類およびゲノム編集したササウシノシタを個別飼育するための餌料である動物プランクトンの培養、添加藻類等に用いる。
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