2014 Fiscal Year Research-status Report
ヒラメ鰓抗原取り込み細胞の性状解析:浸漬ワクチン技術の理論的根拠を探る
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26850128
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
加藤 豪司 独立行政法人水産総合研究センター, その他部局等, その他 (50624219)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 抗原取り込み / 鰓粘膜 / Vibrio anguillarum / Aeromonas salmonicida / Yersinia ruckeri / 浸漬ワクチン / 魚類免疫 / UEA1 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究を遂行するにあたり当初は対象魚種としてヒラメを用いる予定であったが、本魚種では浸漬ワクチンが実用化されていないことから、わが国でも浸漬ワクチンの使用が認められているニジマスを研究対象とすることにした。 これまでにVibrio anguillarumの不活化菌体がGAS細胞により取り込まれることを明らかにしている。そこで、その他の病原細菌として、Aeromonas salmonicida subsp. salmonicida(A.s.s.)、Yersinia ruckeriおよびStreptococcus iniaeの不活化菌体がGAS細胞により取り込まれるか解析した。その結果、A.s.s.およびY. ruckeriの不活化菌体はV. anguillarum同様にGAS細胞により取り込まれるが、S. iniaeは取り込まれないことがわかった。V. anguillarum、A.s.s.およびY. ruckeriについては、当該細菌の不活化菌体を浸漬ワクチンとして利用できることが明らかにされている。一方で、S. iniaeについては不活化菌体の浸漬投与で十分な免疫が付与できないことが報告されている。以上のことから、GAS細胞に取り込まれやすい細菌の性質が、浸漬ワクチンの有効性に影響していると考えられた。 哺乳類の腸管粘膜に存在する抗原取り込み細胞であるM細胞は、レクチンによる染色性(UEA1+WGA-)により識別することができる。そこで、魚類のGAS細胞のレクチンによる染色性を確認した。その結果、ニジマスのGAS細胞は哺乳類のM細胞同様、UEA1陽性WGA陰性という特徴を有していることが明らかとなった。今後はこのようなレクチンによる染色性を利用し、GAS細胞の単離・同定を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究対象としていたヒラメから、ニジマスへの魚種の変更をを行ったが、初年度の研究実施計画①「種々の細菌およびウイルスに対するGAS細胞の取り込み能」、および②「GAS細胞に特異的に接着するレクチンの探索」について予定通りに研究成果を出すことができたため、本年度の自己点検による研究目的達成度は「(2)おおむね順調に進展している。」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、GAS細胞に接着性を有するレクチンUEA1および蛍光染色を施したA.s.s.、V. anguillarumおよびY. ruckeriの不活化菌体を用いて、GAS細胞の単離を行っていく予定である。当初計画案では、レーザーマイクロダイセクションによる染色部位の切り出しを行う予定であったが、これと並行してフローサイトメトリーによるGAS細胞の分取を行うことを考えている。以上の方法でGAS細胞を単離できれば、ニジマスのオリゴDNAマイクロアレイを設計し、GAS細胞のトランスクリプトーム解析を行うことで、本細胞に特異的に発現する遺伝子群の同定を進めていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
平成26年度の研究実施計画①「種々の細菌およびウイルスに対するGAS細胞の取り込み能」において、これまでに魚類で浸漬ワクチンの効果が認められているYersinia ruckeriを使用する必要性が生じた。本病原細菌による感染症は日本国内では未発生であったため、菌株を入手・使用することが困難であった。そこで、本年度はドイツのFriedrich-Loeffler-InstitutのUwe Fischer博士のもとを訪れ、Yersinia ruckeri菌株を使用させていただいた。そのため、国外旅費として827,129円を支出した。国外での研究活動が主であったこと、およびドイツの受入先研究機関で必要物品をすでに所有していたことから、今年度は物品費としての支出は行われなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初予定よりも小額で実験研究を行うことができたため、次年度はGAS細胞の単離法として、レーザーマイクロダイセクション法と並行して、フローサイトメトリーによる当該細胞の単離を行う予定である。これらの方法で回収できる細胞数は比較的少量であると予想されることから、微量RNAの抽出試薬等が必要と考えられる。また、次年度も引き続きドイツFriedrich-Loeffler-InstitutのUwe Fischer博士に協力を依頼するため、その渡航費も必要となる。そこで、次年度繰越金663,871円をこれらの消耗品購入費および海外出張旅費として支出する。
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Research Products
(2 results)