2015 Fiscal Year Research-status Report
新規海水適応遺伝子の探索および海水型塩類細胞分化誘導因子の同定
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26850130
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
宮西 弘 慶應義塾大学, 法学部, 助教 (30726360)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | メダカ / in vivoノックダウン / 塩類細胞 / 海水適応因子 / イオン輸送体 / Forkhead box I / 被蓋細胞 / サブトラクション法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に2つの課題について研究を行った。 1. これまでに同定した、海水移行後1日までに発現上昇し、表皮のみに発現する新規高浸透圧環境応答因子の機能解析を行った。この遺伝子は孵化後に発現が上昇することが分かったため、従来の1細胞期からのノックダウン方法では、ノックダウン効果が孵化前までしか持続せず、解析が困難である。そこで、in vivoにおけるコンディショナルノックダウン方法を確立し、解析を行った。vivo-モルフォリノを用いた、孵化後の仔魚における24時間以内での、mRNAスプライシング阻害によるノックダウンによって、成熟mRNAは約75%減少した。さらに、コントロールモルフォリノ処理群、無処理群と比べて、新規遺伝子ノックダウン群は、海水中における仔魚の浸透圧は有意に上昇した。つまり、この新規遺伝子は、短期の海水移行による浸透圧上昇を抑える働きがあることが示唆された。 2. 塩類細胞の分化誘導因子と考えられるFOXI3のメダカにおける基礎的知見を蓄積した。メダカでは1種のFOXI3を同定した。FOXI3に対する抗体を作製し、全ての塩類細胞に発現するNa+/K+-ATPase(NKA)との免疫染色の結果、FOXI3は全ての塩類細胞の核に発現が見られた。淡水中での塩類細胞の頂端膜に発現する、NCCおよびNHE3、海水中での塩類細胞に発現するCFTR型Clチャネルとの多重染色においても、FOXI3は全ての淡水型・海水型塩類細胞の核に発現した。foxi3 mRNAを過剰発現すると、著しく淡水型および海水型塩類細胞が増加し、foxi3のin vivoノックダウンでは有意に塩類細胞が減少した。よって、FOXI3は全ての塩類細胞の分化誘導因子であることが強く示唆され、FOXI3の下流シグナリングによって各タイプの塩類細胞への分化が起きると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、海水という高浸透圧・高塩分環境における新たな機構の解明に取り組むものである。前年度までに、同定した表皮のみに発現する新規高浸透圧環境応答因子のin vivoコンディショナルノックダウンを確立し、短期の海水移行による浸透圧調節に関わることを示した。さらに、サブトラクション法と次世代シーケンサーを組み合わせた、新規海水適応遺伝子の解析からは、上記の遺伝子を同定することが出来たが、海水型塩類細胞分化に関わる遺伝子は同定出来ていない。そこで、狭塩性淡水魚のゼブラフィッシュの知見から、塩類細胞の分化に関わるシグナリングの現カスケードにおける最下流転写因子であるFOXI3に着目した。広塩性魚のメダカを用いることで、これまでは出来なかった海水型塩類細胞の分化に関わる解析が可能となった。メダカにおけるFOXI3は全ての塩類細胞の分化および増殖を促す転写因子であることが分かり、FOXI3は塩類細胞分化誘導シグナリングの下流遺伝ではないことが明らかとなり、塩類細胞における新たな課題を示すことが出来た。 申請者は本年度より、就職に伴い慶應義塾大学へ移動したため、小型魚類の飼育装置を主とする新たな設備を整える必要が生じた。そのため、予算の都合上、当初予定していた海外機関での実験計画等を変更したが、前年度からの課題を着実に進めることが出来ている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、本研究課題の最終年度となるため、論文での発表を含めて、一連の研究をまとめる。新規海水適応遺伝子については、ノックダウンによる浸透圧上昇の機構を詳細に解析する。ノックダウン個体における水透過性および代謝への影響を調べ、さらに表皮の形態変化を電子顕微鏡レベルで解析する。次に、FOXI3から下流の各タイプ塩類細胞の分化因子を探索する。FOXI3の抗体を用いて、クロマチン免疫沈降法と次世代シーケンサーによる解析を行い、FOXI3による転写制御を受けている遺伝子のスクリーニングを行う。候補遺伝について、FOXI3過剰発現個体およびノックダウン個体で、変化が得られる遺伝子について、塩類細胞における発現をin situハイブリダイゼーションによって調べる。一連の解析から絞られた遺伝子の過剰発現およびノックダウンによる機能解析から、塩類細胞の分化に関わるかを明らかにし、塩類細胞分化誘導シグナリングの新たなカスケードを示したい。
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Research Products
(3 results)