2014 Fiscal Year Research-status Report
絶食により誘導されるニホンウナギの変態のトランスクリプトーム解析
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26850133
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
須藤 竜介 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 研究員 (60722676)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | RNA-seq / レプトセファルス / シラスウナギ / 変態 |
Outline of Annual Research Achievements |
ニホンウナギの変態機構解明するため、変態期のトランスクリプトーム解析を実施した。 変態期を、形態から変態前・変態前期・変態後期・変態後の4期間に分け、それぞれ8個体づつサンプリングした。各個体から頭部と体部からtotalRNAを抽出した。各群・各組織8個体分をプーリングし、RNA-seq法による解析を実施した。その結果、約3億7千万リードの生データを取得した。 得られたデータはSolexaQAにより低クオリティーリードのトリミングした後、ConDeTriを用いて、illumina sequence のPCR特有の非特異的な増幅リードの除去を行った。次にTrinityとTrans-ABySSおよびCLC Genomic Workbenchを用いてde novo assembleは実施し、cDNAのカタログ配列を得た。 上記のデータをCLC Genomic Workbenchにより各リードをMappingし、各群の発現を比較した。その結果、体部の発現の相関は変態前vs変態前期でr=0.96、変態前期vs変態後期でr=0.79、変態後期vs変態後でr=0.95であり、変態前期と変態後期で大きく発現が変化することが明らかにあった。次に、変態前期と変態後期で特異的に高発現している遺伝子に関してBlast2Goを用いて、Gene Onotolgy解析をしたところ分子としての機能、細胞の構成要素、生物学的なプロセスの3側面すべて、変態前期でより多様に変化していることが示唆された。また、レプトセファルスでシラスウナギに比べて5倍以上の発現が高かったコンティグ数は2705contig中でアノテーションのついたcontig数は735であり、73%が機能が未知のコンティグであることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、柳の葉の形をしたレプトセファルスからシラスウナギへの劇的な形態変化を伴うニホンウナギの変態に関して、トランスクリプトーム解析により、その生理メカニズムを明らかにすることである。また、ニホンウナギの変態は絶食により誘導されることが報告されており、絶食と変態の関係についても解析することを目的としている。 初年度(平成26年度)は、「レプトセファルスの作出と飼育」と「絶食処理とサンプリング」を実施予定であった。人為催熟させた親魚を自然採卵させ受精卵を得た。レプトセファルスの飼育はクライゼル型水槽を用いて行い、1日5回サメ卵を主材料としたレプトセファルス専用餌料を給餌し飼育した。飼育から約200日で変態が開始される全長50mm以上に達したため、絶食による変態を誘導させた。変態過程を変態前、変態前期、変態後期、変態後の4期間に分け、サンプリングし、解析までRNAlaterに浸潤して-20℃で保存した。さらに解析個体をRNA-seq法によるトランスクリプトーム解析に供することができた。これにより、約3億約3億7千万リードの生データを取得し、これを解析した結果、cDNAのカタログ配列の作成および各器官の組織別の発現量の比較を行うことができた。 初年度で変態期のトランスクリプトーム解析まで実施することができたため、本研究は当初の計画以上に進展していると考えられる。その理由は、①レプトセファルスの飼育が順調に進み早く変態できる全長に達したことと②トランスクリプトーム解析を会おうとソーシングすることで実験の効率を高めたことがあげられる。 次年度以降も、このペースで研究を進めることで、変態期の分子生物学的基盤の解明がさらに進むものと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、①RNA-seqにより得られたデータの解析と②絶食の影響の解析、③変態重要遺伝子の機能解析を行う予定である。 ①データ解析:現時点では、de novo assemblyとmappingが終了しているが、各ステップのさらなる精度の向上を行う。また、de novo assemblyにより得られたcontigのアノテーションを行うため、全Congigに関してスーパーコンピュータを利用してBlastXによるローカルBlastを実施する予定である。アノテーションが得られた遺伝子に関してGene Ontology解析を実施し、各器官でどのような役割の遺伝子ががどのような割合で発現していたのかを明らかにすることで、変態期の発現動態の概要を把握する。また、上記の解析を通じて変態の開始および変態現象そのものに重要だと考えられる遺伝子をピックアップする。 ②絶食実験:全長55mm前後の個体に関して、絶食刺激を行う。実験開始時点および一週間後にサンプリングし、一週間後にサンプリングした個体に関しては絶食の影響で変態が誘導された個体と誘導されなかった個体に分ける。開始群、絶食誘導成功群、絶食誘導失敗群の3群に分け、①で推察された変態開始に関わる遺伝子をリアルタイムPCR法でその発現を解析し比較する。これにより、絶食による刺激と変態の分子生物学的な関係を明らかにすることを試みる。 ③機能解析:変態の開始および変態現象そのものに関わる遺伝子に関して、in situ hybridization法により組織学的な解析を実施する。また、②で明らかとなった変態の開始に関わると推察される遺伝子に関しても同様に解析する。 以上を通じて、ニホンウナギの変態期の発現動態を明らかにすることを本年度および次年度の方針として研究を推進する予定である。
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Research Products
(2 results)