2014 Fiscal Year Research-status Report
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26850139
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
張 馨元 東京大学, 東洋文化研究所, 助教 (60635879)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | フードレジーム / 中国 / COFCO / 穀物貿易 / 食料需給 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度には海外調査を2回実施した。調査の内容は1)地方誌、『中国糧食年鑑』などの食料需給に関連する資料の収集、2)中国側研究者との意見交換、3)民間の穀物商人への聞き取り調査の実施である。上記調査活動は香港中文大学、華南農業大学、中国農業大学などの機関と研究関係者の協力を得て、予定通り実施することができた。また日本において資料を整理と分析する作業も進んでいる。上記研究活動の成果として、平成26年度中に申請者は研究業績を2点公表し、いずれも従来の中国食料需給構造に関する通説を覆す成果となっている(13.研究発表をご参照下さい)。 研究実績の1点目は“China's Exports of Dry Beans: The Reverse Side of the Domestic Grain Market”と題する英文論文である。この論文は1990年代下旬から2000年代初頭までの中国主要穀物市場と乾燥豆輸出の情勢が相反する原因を検討し、国家貿易以外の穀物貿易分野、とりわけ乾燥豆輸出貿易の成長とそのメカニズムを明らかにしている。 2点目の業績は2014年10月河南大学に開催した中国経済史学会にて発表した「再論1950-1970年年代の『南糧北調』」と題する学術報告である。本報告の内容は以前から中国の食料需給構造に関する通説である「南糧北調」(南方で生産される穀物を北方へ輸送し供給する)の内容を覆し、1950~70年代の中国において、北方へ移入した小麦は主に輸入したものであり、南方の食糧産地から移出したコメは主に輸出向けであったこと明らかにしている。この構造が今日の食糧需給構造にも経路依存的に影響を与えている点が無視できないと主張する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究計画では、2回の海外調査と日本国内での資料分析を予定している。また、年度中の研究目標は、1)2000年代以降の中国の食料需給構造を明確にすること、2)COFCOの基本的経営体制を明確にすることの2点に設定されている。 海外調査に関しては、計画通り実施することができた。一回目の海外調査は、2014年5月中旬に中国広東省と香港で実施した。華南大学、香港中文大学を訪問し、広東に拠点を置く穀物商人を対象に聞き取り調査も行った。2回目の調査は2015年3月に中国農業大学の訪問研究員として北京に滞在し、中国の食糧貿易と中国資料収集と「糧食供給と地方経済」(中国語)と題する講演を行った。また、2015年1月に別の渡航機会を利用し、中国で関連資料を収集し、日本へ郵送した。国内では、東京大学東洋文化研究所を拠点に、2000年以降の中国食料統計の整理と分析も進めている。 したがって、申請者が本研究課題に関しては、平成26年度初頭に設定したの2つの目標が達成されたと自己評価している。目標1)に関しては、研究成果の1部を学会報告の実施と学術論文の発表を通じてすでに公表し始めている。2)に関連する研究実績は平成27年度中に同じく学会報告と学術論文の形で公表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究目標は、中国の食料需給におけるCOFCOの役割を検討し、関連する実績を公表することである。本年度の研究活動は2分して行う予定である。まず、資料の収集と分析に研究時間を5割に与える。同時に、中国で企業訪問を実施し、具体的にはCOFCOの傘下企業と同じく国有企業である吉林糧油集団を訪問し、関係者への聞き取り調査を実施する予定である。可能であれば、アメリカイリノイ州の穀物生産者と貿易企業に対するインタビューも実施する。資料分析と海外調査を平行して行うことによって、調査から得られる知見と資料から得られる歴史的経緯を合わせて研究を進めることができる。 平成28年度の研究活動はこれまでの研究生かをまとめ、論文の執筆と研究成果の発表に重点を置く。具体的には、穀物メジャーに対応しうる国有企業であるCOFCOの役割を題材に、国際フードレジーム論の再構築と中国の食料需給と世界経済の関係について検討する。口頭報告を含む成果発表の場として、日本アジア政経学会、アメリカAssociation for Asian Studiesを予定している。
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