2014 Fiscal Year Research-status Report
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26850143
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
島 義史 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター水田作研究領域, 主任研究員 (10414781)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 新規参入 / 独立就農 / 第三者継承 / 経営確立 / 経営継承 |
Outline of Annual Research Achievements |
新規参入者に対する全国アンケート(全国農業会議所実施)のデータを用い、新規参入者の経営成長にかかわる農業所得の確保状況や就農時の経営規模について、部門別、就農方式別の比較分析を行った。その結果、農業所得で生計が成り立っている割合等から耕種経営では就農後の経営確立が容易ではないことが示された。その中で、専業経営に至るまでの期間が短いとされる第三者継承に注目すると、第三者継承は、独立就農に比べてより大きな経営面積で経営を開始していることが明らかになった。第三者継承は耕種経営において就農時の経営資源確保の有利性がある就農方式と認められた。 また、新規参入者の経営成長の過程を把握するためにイチゴ作新規参入者を対象としたケーススタディを行った。2000年に就農したイチゴ作新規参入者は、就農時の栽培面積は20aから就農4年目に38.6aに拡大している。新規参入者夫婦の農業所得に注目すると、年間300万円以上が安定的に確保されるのが栽培面積拡大して2年目以降で、経営上の課題となってきた雇用管理や生産管理が一定程度確立したこととあわせ、経営確立は就農後6~7年目で実現したとみられた。 さらに、上記新規参入者と同地域で就農したイチゴ作新規参入者への聞き取り調査を実施し、今後の経営継承の意向を把握した。「継承相手はこだわらない」とした者の割合が最も高く67%を占め、「第三者に継承する」という意向を示した者は11%であった。現時点で明確に「子弟への継承」すると回答した者は確認できず、限られたサンプル数からではあるが「一代限り」と考える新規参入者が広く存在する可能性があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、大規模データの統計解析やケーススタディを行い、経営規模や部門、経営管理内容の変化から段階的な新規参入者の経営成長過程を明らかにし、成長段階に応じた支援方策を示すことを目的としている。H26年度は新規参入者の経営成長のパターンを明らかにするため、全国規模のアンケート調査データの分析とイチゴ作新規参入者の事例分析による成長段階の検討を計画していた。 そのうち前者では、経営規模、経営部門、農業所得などを分析し、耕種経営の独立就農者で円滑に経営が確立できていない者が少なくないことを示した。また、就農後の経営展開の分析を通じ、独立就農は就農直後から経営確立に向けて経営面積や部門を拡大していくのに対し、第三者継承は就農時に概ね専業経営として成り立つ程度の事業規模で経営を始めており、農後の農地の追加や部門の拡大の動きは目立たないという、就農方式別の経営成長のパターンの相違を明らかにしている。 後者では、イチゴ作新規参入者の就農後14年間の経営史について年毎の経営対応とあわせて経営費や所得等の経営データを整理した。経営管理の充実状況や経営データの経時的な分析から、経営成長の過程を就農から数年、規模拡大とその直後、経営確立時の三つの段階で整理した。 以上のように、大規模データの統計解析とケーススタディを並行させて新規参入者の経営成長過程、成長段階の解明を進捗させており、上記評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度以降は、新規参入者の経営成長のパターンや経営成長段階ごとの経営管理の特徴を引き続き検討するとともに、成長段階に応じて必要となる支援と支援ネットワークについて、分析、取りまとめを行う。 新規参入者の成長経路については、参入地域の既存農家の経営成長経路と比較を行うとともに、経営確立後の継続的な経営成長と「一代限り」の意向との関係性を検討する。また、順調な経営成長を実現している新規参入者における経営成長段階別の経営管理と経営停滞者のそれと対比しつつ、経営管理の重要点の所在を検討する。さらに、経営成長を促進する支援方策のあり方については、利用した支援方策を順調な経営成長を実現している者と経営停滞者とで比較し、効果的な支援方策を分析する。また、参入段階で形成した支援ネットワークが経営成長を阻害する可能性とともに、経営成長段階にあわせた新たな支援ネットワークの形成の必要性を検討する。
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Causes of Carryover |
今年度の研究進捗に必要な調査を効率的に実施することで調査回数、旅費が計画を下回ったため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
採択後の円滑な研究進捗のために、研究期間1年目は主な研究対象をこれまで定点観測を行ってきた新規参入者に絞ってきたが、研究2年目以降は、計画の進捗にあわせて調査対象の追加を柔軟に行う計画としていた。前年に生じた次年度使用額は、H27年度における調査対象の拡大に備えて、調査旅費に充てる見込みである。
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Research Products
(1 results)