2014 Fiscal Year Research-status Report
東アフリカの灌漑稲作支援における生産者組織と地域的インパクト
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26850146
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
一條 洋子 東京農工大学, イノベーション推進機構, 特任准教授 (10726699)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 開発支援 / 灌漑整備 / 非灌漑稲作 / 生産者組織 / 地域経済 / ケニア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、東アフリカのタンザニアおよびケニアにおける灌漑稲作地域を対象に、稲作支援の地域的影響について、援助主体がテコ入れをする生産者組織と、当該組織の周辺住民(労働者、土地貸借人、新規参入志望者など)との関係を主軸に考察することで、より広い視野から今後の稲作振興の方途を提案するものである。 平成26年度は、文献調査と既存のデータ整理を進めるとともに、9月の2週間、ケニアの研究対象地域であるアヘロ地域に出向いて現地調査を実施した。とくに、これまで詳細な調査ができていなかったアウト・グローワーと呼ばれる、政府が整備した大規模灌漑エリア(NIBエリア)の周辺で独自に稲作を続ける人々について、組織の存在の確認と、見出された組織の実態把握のための調査を進めた。合計5つの生産者組織を確認し、各組織につき1~2日をかけて、リーダー等から稲作や組織形成の背景、組織活動の内容、課題等を聴き取り、文書資料の収集を行った。結果として、(ケニアの他の灌漑稲作エリアで報告されているような)NIBやNIB生産者との軋轢はほとんど聞かれず、むしろ利用や協力の機会を積極的に模索している様子が伺い知れた。首都ナイロビにおいては、ジョモケニヤッタ農工大学、NIB(National Irrigation Board)本部、および国家統計局にて資料収集を行った。 調査結果は日本にいる研究協力者に適宜連絡し、共同で準備していた論文の内容に反映させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は現地調査に基づき、これまで詳細が不明であったアウトグローワー(NIBエリア外で稲作する生産者)の組織活動について聴き取り調査と資料収集を実現できた。成果として、アウトグローワー地域の中の差異や彼らの組織活動の詳細、また、NIBおよびNIB生産者ともむしろ積極的な関係構築が求められている状況を確認できた。今回の現地調査は短期間ということもあり、調査結果それ単体では不足があるものの、既存の研究成果に活用し、研究協力者との論文執筆に生かすことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、まずこれまでに得た調査データの整理と文献調査を進める。とくにケニアで見られた、NIBエリアとアウトグローワーの関係性について詳細な分析と考察を行う。また、もう一つの研究対象地域であるタンザニアに赴き、灌漑稲作エリアの調査を実施する。それらを通して、ケニアとタンザニアの両事例から導かれる生産者組織の実態およびそれらの周辺住民との関係性についての仮説を導く。
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Causes of Carryover |
現地調査へ同行予定であった研究協力者が家庭の事情により渡航できなくなったため旅費が執行されなかった。代替案として論文の英訳発注を検討したが、学術レベルの引き上げにもう少し時間を掛ける必要性を感じたため、執行を急ぐことを避け、次年度に廻すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究協力者の現地調査の実施に優先順位を置くと同時に、論文の英文化の準備を進め、いずれかで執行する。
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