2015 Fiscal Year Research-status Report
海岸侵食に伴う漁村社会の生活・生業変容に関する研究
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26850148
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Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
岩崎 慎平 福岡女子大学, 文理学部, 講師 (20708028)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 海岸侵食 / 漁村社会 / 生活行動 / 持続的生計アプローチ / 住居移転 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、海岸侵食に直面する沿岸漁業者の対処行動および生活・生業変容に関する影響評価を行うことを目的とする。本年度の研究は、海岸侵食の進行が著しい地域(インド・オディッサ州)を対象に、海岸侵食に直面する漁村で暮らす人々の生活行動調査および脆弱性評価のための持続的生計アプローチに準じた質問紙調査を実施した。 前者では、2つの漁村(海岸侵食リスクの高い漁村と周辺漁村)を選定し、本研究企画に賛同・協力して頂いた漁家夫婦10組(各村5組)を対象に、実験器具(GPS・加速度計)および質問紙(生活時間および社会水産調査票)を用いて2015年4月から2016年3月まで生活行動調査を毎月実施した。本研究は季節変化および海岸侵食リスクに応じた住民の生業活動およびライフスタイルの違いについて比較研究することが可能である。同データを用いて、最終年度は、海岸侵食リスクの有無による生活行動を性別・生業別に分けて集計・分析し、その結果を学会報告ならびに論文投稿としてまとめる予定である。 後者では、同様に2つの漁村(海岸侵食リスクの高い漁村と周辺漁村)を選定し、計104の漁家世帯を対象とした脆弱性調査を実施した。同調査は漁家世帯の「生計資産」を尋ねるとともに、海岸侵食に対する環境意識および住居移転に関する対処行動について確認した。結果、海岸侵食リスクの有無による生計資産の差異を明らかにした。加えて、海岸侵食リスクが高い地域で暮らす住民は漁業活動が容易であることを理由に同地域に居留まる意思が強いことを確認した。前者の生活行動に関する詳細なデータと照らし合わせ、海岸侵食リスクの高い地域における漁村社会の実相を論文として寄稿する予定である。 同上研究に加え、海岸侵食が侵食するタイ沿岸部およびインドネシア・スマトラ島沿岸部におけるマングローブ保全活動および課題を整理し、英文図書の分担執筆としてそれぞれ寄稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地協力機関と連携し、予備調査を含む毎月の生活行動調査(2015年3月~2016年3月)を計画通り遂行した点において、目標はおおむね達成できたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
インド・オディッサ州では、既に実施して収集した各種データの集計・分析を進めるとともに、衛星画像や航空写真を集めて調査対象海岸部における土地空間動態および家屋分布変化の解析を行い、住民の生活・生業活動に関する各種データと関連付けて分析を行う。 インドネシア・バンダアチェでは、沿岸資源の秩序維持と資源利用者間の紛争解決を図るために存在する伝統的な管理組織(人)のパングリマ・ラウトを対象にヒアリング調査を行い、津波被災前後にみる漁村社会の変容および沿岸資源管理のガバナンスについて考察・分析する。
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Causes of Carryover |
当初計画では、インド・オディッサ州の調査に加えて、インドネシア・バンダアチェを対象としたフィールド調査を実施する予定であったが、オディッサ州における毎月の生活行動調査に専念して調査を進めることが重要と判断し、バンダアチェでの調査は次年度に先送りすることにしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
オディッサ州での補足調査およびバンダアチェでの現地調査を実施するには相当額の費用がかかるため、本年度予算の一部を次年度に繰り越すことにした。
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