2014 Fiscal Year Research-status Report
水生植物の繁茂する閉鎖性水域における流動-水質予測モデルの構築
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26850151
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
濱上 邦彦 岩手大学, 農学部, 准教授 (20571699)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 溜池 / アオコ / 藍藻類 / 水温成層 / 沈降速度 / 貧酸素化 / 現地観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
ため池では流入流出が少ないため水の循環率が悪く,とくに夏季においては水温成層の形成により池内の循環がさらに抑制され,底層の貧酸素化といった水質問題が起きやすい.また近年生活雑排水の流入による富栄養化が進行し,藍藻の増加によるアオコの発生などの水質悪化が問題となっている.安定した水温成層場の形成は,藍藻に優位な生息環境となりアオコの発生・維持が増進されることが既往の研究により報告されており,アオコ発生の制御を行う上で水温成層の形成・消失過程と藍藻の挙動の関係を解明することは重要な課題である. 既往の研究により長期的な水質変動と藍藻の挙動について検討した事例はいくつかあるものの,日サイクルのような短期間での水質変動と藍藻の挙動について検討した事例は少ない.そこで本研究では,アオコの発生が見られるため池を対象池とし,水温成層化の進んだ夏季において短期間での水質変動と藍藻の挙動について検討するために,水温・DOの鉛直分布および藍藻の挙動について現地観測を行った. 藍藻個体数のピーク値水深の移動距離から求めた藍藻の移動速度の変化について検討した結果,沈降速度・浮上速度ともに既往の研究よりも低い値を示した.安定した水温成層が形成されると,藍藻の沈降速度は減少し,その結果藍藻の移動範囲が狭まることで,高い位置での沈降・浮上を繰り返すことができる.これが継続されることで他の競合する植物プランクトンよりも優位に立つことができるためアオコの発生につながりやすいことが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水温成層化したため池における藍藻類の挙動について検討するため,水温成層場における溶存酸素の挙動を解析し,夏季における底層の貧酸素状態を示した.また,藍藻個体数のピーク値水深の移動距離から求めた藍藻の移動速度の変化について検討した結果,沈降速度・浮上速度ともに既往の研究よりも低い値を示した.目標とする解析モデルのキャリブレーションデータを現地観測から順調に取得できている.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年の研究においては,藍藻類の挙動について調べるにあたり,蛍光光度計のキャリブレーションを適切に行えていなかったため,藍藻類とその他の藻類の分離が曖昧なままであった.そこで本年度では蛍光光度計のキャリブレーション作業を詳細に行う.具体的には藻類を購入し,濃度を調整してキャリブレーションを行う.その結果を用い,藍藻類の卓越した時期において現地観測を再度行い,夏季における成層化した水域の藍藻の挙動について検討を行う.
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