2014 Fiscal Year Research-status Report
排水過程における土壌空気の物理性のリアルタイム音響測定技術開発
Project/Area Number |
26850153
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
深田 耕太郎 島根大学, 生物資源科学部, 助教 (40633178)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 技術開発 / 音響測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
H26年度研究実施計画をもとに研究を進め,宮城で行われたH26年度土壌物理学会大会,および,島根で行われた島根大学サテライトキャンパスにて,それぞれ,1件のポスター発表を行った. H26年度は気相率の測定に重点を置き,リアルタイム測定法の開発を実験室レベルで達成することを目標とした.はじめに実験装置を作成した.アンプ,マイク,スピーカーを組み合わせて既存の音響インピーダンス測定装置を再現した.実験により,この装置に対して,従来の音響測定が可能であることを確認した.音響装置に加え,土壌試料を排水するための吸引板を作成した.以上により,実験装置は完成した.試料として鳥取砂丘砂を内径5cm,長さ2.5cmの円筒容器に充填したものを用いた.音響インピーダンスのリアルタイム測定には,音の再生と録音を同時に,繰り返し行う必要がある.従来の測定では,専用のソフトを用いていた.今回は,同じソフトを手動で繰り返し使用することにした.測定システムの有効性を確認するため,砂丘砂に散水し,数分間の時間間隔で音響測定を行った.その結果,音響インピーダンスの時間変化を観測できた.これは,排水によって地表面の気相が増加したことを示している.以上より,リアルタイム測定法の可能性を示すことができた.今後,音響測定を重量法を用いて検証するために,試料質量の連続測定が必要となる.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H26年度の研究によって,研究実施計画の90%程度が達成された.このことから,到達度はおおむね順調であると判断した. H26年度の研究実施計画は,音響測定装置の作成と実験による検証からなる.検証では,平衡状態にある試料の測定から始め,非平衡状態の場合へと進んだ.まず,既往研究の報告を参考に,アンプやマイクなどを組み合わせ,装置を完成させた.そして,新しい装置を用いて,異なる平衡水分状態における鳥取砂丘砂の気相率を音響測定し,重量法による結果と比較した.その結果,両者がよく一致したことから,装置の有効性を確認できた. 続けて,時間変化する系のリアルタイム測定の検討に移った.計画では,約5秒に1回の測定を繰り返し行うことを目標とした.これは,音響インピーダンスの測定法に必要な時間から生じるインターバルの限界である.現段階では,数分間隔の連続測定が確認された.測定間隔をさらに短くする場合,音響測定法自体に技術的な問題はない.しかし,試料の質量測定を音響測定と同様の時間間隔で行う必要がある.これは,まだ実現していない.しかし,秤のインターバル測定機能を利用することで可能になると考えられる. 以上より,計画時における課題の一部は残したが,装置の作成と実験による検証の一部を完了したことから,H26年度の研究到達度は概ね順調であると判断した.
|
Strategy for Future Research Activity |
H26年度の課題を完了するとともに,当初のH27年度研究計画に基づき,研究を進める. はじめに,秤のインターバル測定機能を利用して,排水過程にある試料の質量変化をリアルタイムで把握する.これにより,音響測定の測定間隔を5秒程度に短くした場合の結果を検証する. 次に,H26年度に得られた結果を基にして,試料の形状を変え,テンシオメータ―を組み込んで,同様の実験を行う.実験の概要は以下のとおりである.試料として,鳥取砂丘砂を内径8.5cm,長さ10cm程度の円筒容器に充填したものを用いる.既存の音響インピーダンス測定装置に加えて,試料の底部にメンブレンフィルターを取り付けた排水装置を作る.そして,試料の側面3か所からテンシオメータを挿入する.試料全体の排水はメンブレンフィルターを通して行う.排水チューブの受け口に秤を置き,試料は定在波管と連結する. 実験では,試料に一定の動水勾配を与え,排水する.排水過程において,H26年度に確立した技術を用いて,排水量,マトリックポテンシャル,および音響インピーダンスの時間変化を測定する.そして,排水量から試料全体の気相率を求める.また,排水量とマトリックポテンシャルから不飽和透水係数を求める.マトリックポテンシャルや不飽和透水係数は,従来の土壌の物理性である.これらと音波インピーダンスの関係を調べることで,排水にともない,試料に空気が浸入する過程を,音響インピーダンスを用いて表すことができるようになると考えられる. 以上の実験により得られた結果を取りまとめ,成果の発表を行う.
|
Causes of Carryover |
当初の計画から購入予定であるアンプ一台(30万)の納期が遅れているため.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度中にアンプが納品される予定であり,それに充てる.
|