2015 Fiscal Year Research-status Report
農業の6次産業化の推進に向けた青果物の特性に応じた最適乾燥条件の解明
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26850156
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
折笠 貴寛 岩手大学, 農学部, 准教授 (30466007)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 6次産業化 / ブランチング / ホウレンソウ / パプリカ / 複数品質の同時評価 / インピーダンス / Fv/Fm / コンジョイント分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
加熱前処理により生理活性を低下させたホウレンソウを熱風乾燥させ、生理活性と熱風乾燥速度の関係について検討した。ホウレンソウの生理活性(細胞膜健全性(細胞膜機能の指標)およびFv/Fm(生命活動の指標)と乾燥特性(含水率および表面積)を計測したCole-Coleプロットの円弧の頂点座標に着目し、加熱前処理過程における細胞膜健全性変化を定量的に検討した。その結果、Fv/Fmと乾燥終了時におけるホウレンソウの表面積残存率は有意(P<0.01)に相関した。この結果から、加熱前処理によるホウレンソウの生理活性低下は熱風乾燥速度向上要因のひとつであることが示された。 熱湯および過熱水蒸気を用いた2種類のブランチング処理によって、POD残存活性比を数段階に調整した乾燥パプリカの品質(L-アスコルビン酸、総ポリフェノール、色彩)変化を測定し、ブランチング処理が乾燥パプリカの品質に及ぼす影響について検討した。その後、コンジョイント分析によって求められた各要素における重要度をパラメータとしたブランチング処理による乾燥パプリカの複数品質の保持効果評価手法の確立を行い、本実験条件下の乾燥パプリカ製造工程における最適ブランチング処理条件の検討を行った。その結果、L-アスコルビン酸および総ポリフェノール残存率はPOD残存活性比0.8で、色彩変化抑制効果はPOD残存活性比0.1でそれぞれ最大化された。コンジョイント分析を用いたブランチング処理における複数品質保持効果の同時評価手法を確立することにより、乾燥パプリカ全体の品質に対する消費者の嗜好度は、試料のPOD残存活性比を過熱水蒸気ブランチングにより0.8に調整することで最大化されることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、青果物の長期保存のための加工方法として乾燥に着目し、6次産業化の推進に必要な青果物個々の特性に応じた最適乾燥条件の解明を目的とした。異なる乾燥手法について、青果物の乾燥過程における乾燥特性の解析と品質を左右する酵素活性・栄養成分変化の測定を行い、その変動状況について予測モデルを構築する。これらの解析結果にライフサイクルアセスメント(LCA)手法による解析も加味し、環境負荷やコストにも配慮した素材ごとの特性に応じた最適乾燥のデータエースの構築を目指す。その中で、平成27年度は、ホウレンソウおよびパプリカを対象として、ブランチング処理(加熱前処理)に伴う生理活性と乾燥速度の関係、およびブランチング処理が乾燥処理試料の品質に及ぼす影響について検討した。品質変化については、コンジョイント分析を行うことにより、複数品質保持効果の同時評価手法の確立について検討を行い、消費者の嗜好度を考慮した品質評価理論の構築に関して検討した。これらの研究成果は、当初計画で設定した平成27度研究目標(品質変化予測モデルの最適化)を満たしており、当該年度の研究目標はおおむね達成されたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、決定された最適条件に従って青果物を乾燥し、エネルギー投入量などの一次データを取得する。これらのデータをLCA・LCC手法により解析し、環境負荷・コストの定量化を行う。また、エネルギー投入量の削減効果について、各乾燥法の解析結果の相互比較により検討する。これらの項目を総合し、環境負荷やコストを低減しつつ、青果物の品質を保持できる新たな乾燥適性を青果物ごとに評価し、素材ごとの乾燥適性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
平成27年度は、国際学会による研究成果発表を予定していたが、本学で開催された農業環境工学関連学会2015年合同大会の運営業務のため、国際学会発表が困難となり、605,536円の残額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度実施できなかった研究成果発表は次年度以降に実施する予定であり、全額執行する見込みである。なお、平成28年度は、研究代表者がベルギー(KU Leuven)に留学するため、当初計画通りに研究課題の実施が困難となる可能性がある。随時進捗状況を確認し、必要に応じて補助事業期間延長の申請も検討する。
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Research Products
(4 results)