2014 Fiscal Year Research-status Report
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26850165
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
山本 聡史 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物系特定産業技術研究支援センター園芸工学研究部, 主任研究員 (20391526)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 画像処理 / 三次元モデル / 品質評価 / 内部品質 / 密度 / 外観品質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、距離情報と色情報を同時に出力する3次元センサを用いて農産物の表面形状と色を3次元点群(ポイントクラウド)として取得する。ポイントクラウドを解析して農産物の3次元モデルを構築し、品質評価を行う技術を開発する。 本年度は、1)果実全体をカバーする撮影システムの構築、2)ポイントクラウドを用いた3次元モデルの生成手法の確立、3)生成した3次元モデルの精度評価、の3つの課題に取り組んだ。対象作物としてリンゴを供試し、複数の角度から撮影して果実のほぼ全面をカバーするポイントクラウドを取得し、3次元モデルの生成を試みた。しかし、3次元センサから得られたポイントクラウドは位置情報のオフセット誤差を含み、回帰直線を用いて最大径や体積を推定することは可能であったが、実物に忠実なモデルを生成するには位置情報の補正が必要であった。そこで、色情報を解析して得られる果実の輪郭線からポイントクラウドの位置情報を補正するアルゴリズムを考案し、実物の形状や色の表面分布といった特徴を反映した3次元モデルを生成することができた。 この輪郭線を基準とする補正手段を用いる場合、撮影方向がより広範囲できめ細かくなる程、位置精度の向上が期待されたことから、当初計画していた複数のキネクトセンサを用いるよりも、農産物自身を回転させる方が効率的で精度向上が期待できると判断された。 1台のキネクトセンサ、照明、回転テーブルからなる撮影システムを構築し、100個以上のリンゴを供試して各果実の3次元モデルを生成した。体積と最大径について実測値と比較した結果、体積はRMS誤差率が2%、最大径のRMS誤差は0.9mmであり、過去の研究と遜色ない精度が得られた。 また、ソフトウェアの閾値に若干の変更を加えるだけで、リンゴの他、スイカ、メロン、カボチャ、パパイヤ、マンゴー、アボカド、ザクロ、タマネギの三次元モデルを生成できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
距離情報と色情報を同時に出力する3次元センサを用いて農産物の3次元モデルを生成するための撮影システムを構築し、ソフトウェアを実装した。 体積と最大径を高精度に推定できたが、農産物の密度を内部品質評価の基準とするためには、体積の測定誤差を1%未満にする必要があり、ポイントクラウドの位置情報の補正方法について再検討の必要性が認められた。 また、本年度試作した撮影システムでは手動で回転テーブルを駆動したが、選果施設などへの本技術の適用場面や測定の効率化を考慮すると、撮影システムの自動化を図る必要があると考えられた。 3次元モデルの色付けは、モデルを構成する三角形のポリゴンの位置と法線方向に基づき色情報を参照して行った。その結果、実物の特徴を反映しているように観察され、外観品質の客観的な評価が可能な見込みが得られた。しかし、3次元センサのポイントクラウドからノイズを除去する過程において過度に平滑化された部分では、本来と異なる色に着色されることがあり、今後ソフトウェアの改良が必要と考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策 本年度の進捗状況を踏まえ、残り2年間の研究期間で以下のように推進する。 まず、初年度に構築した3次元モデルの生成手法を発展させ、ステレオ画像法を適用してポイントクラウドの最終的な位置補正を行い、果実のサイズ推定精度の向上を図るとともに、3次元モデルの色付け精度を併せて向上させる。この改良したソフトウェアにより果実の内部品質を評価するため、収穫直後からの密度の経時変化や空洞の度合いを推定する。次に、外部品質の評価では、果実形状の対称性と表面形状(規則性、なめらかさ)を数値化する手法を明らかにする。また、表面の色のヒストグラムからいくつか主要な色を選び、各色の表面積に占める割合や3次元的な分布状況を数値化する手法を検討する。さらに、熟練作業者が外観品質により選別した各等級の農産物の3次元モデルの形状と表面の色分布の数値化を行い、統計的なデータを取得する。このデータに基づき、実際に外観品質により自動選別し、判定性能を明らかにする。
次年度の研究費の使用計画 本年度は担当者の異動に伴い画像処理ソフトの新規購入の必要が生じ、効率的なポイントクラウド撮影システムの試作を次年度以降に見送った。次年度は、自動撮影システムの構築や、画像処理を高速化するためのグラフィックボードの購入、試験のための農産物購入、熟練作業者の選別作業に関する調査に要する旅費に使用する。また、本年度の成果を発表するための学会参加費及び旅費に使用し、さらに、論文投稿する際の投稿料、英文校正代、別刷り料金に使用する。
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Causes of Carryover |
3次元モデルの生成手法の検討に予想以上の時間を要し、本年度中に論文投稿可能な結果をとりまとめるには到らなかった。また、学会発表もウェブセミナーという形で行い、ほとんど費用がかからなかったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度中に本年度の結果をとりまとめて論文投稿を行う予定であり、その際の投稿料、英文校正費用、別刷り料金として使用する。
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