2014 Fiscal Year Research-status Report
ブタ卵細胞質内精子注入卵における卵活性化機構の解析および新規卵活性化誘起法の開発
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26850172
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
中井 美智子 独立行政法人農業生物資源研究所, 医用モデルブタ, 研究員 (30442825)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ICSI / PLCzeta / ブタ / 受精 / 卵活性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
卵細胞質内精子注入 (ICSI)技術は、数が少ない、運動性が乏しいなど通常の受精には関与できない精子であっても遺伝資源として活用することのできる有用な繁殖補助技術である。しかし、ブタにおいてICSIをした卵 (ICSI卵)の受精、胚発生効率の低さが問題となっている。その原因の一つとして、ICSIによって注入された精子による卵活性化誘起の失敗が挙げられる。 本研究では、ICSI卵の卵活性化誘起失敗は、ICSIに用いる精子の卵活性化誘起因子PLCzeta保有量不足に起因しているのではなかと考え、PLCzetaを保有する精子のみをICSIに用いた時の卵活性化誘起効率や卵活性化現象の検証に取り組んでいる。本年度は、PLCzetaを保有する精子の選抜方法を検討した。自力で透明帯を通過した精子はPLCzetaを保有していると考え、卵細胞質を除去して透明帯のみにした卵を用いて体外受精を行ったが、透明帯通過精子の判別が困難であった。 また、生理的に卵活性化現象を誘起できる新しい人為的卵活性化誘起法の開発を試みている。具体的には、PLCzetaタンパク質を非侵襲的手法により卵細胞質内へ導入し卵活性化誘起を目指す。本年度は、ブタ精巣total RNAからPLCzetaをクローニングしブタPLCzeta mRNAを作成した。また、これをブタ卵に注入することにより卵活性化現象の引き金となるカルシウムオシレーションが生じることを確認した。さらに、蛍光標識したPLCzetaタンパク質を合成するために、蛍光タンパク質Venusを連結させたPLCzeta mRNA+Venusを作成した。これにより、Venusの発光強度を測定することで卵細胞質内に導入されたPLCzetaタンパク質量をモニターすることが可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度中にPLCzeta保有精子の選別方法を確立して卵活性化現象の検証にとりかかる予定だったが、選別方法の確立には至らなかった。また、新たな卵活性化方法の開発については、PLCzeta mRNA合成に予想以上に時間を要したためPLCzetaタンパク質を合成することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
PLCzeta保有精子の選抜方法については、パーコール遠心法での選抜を試みる。さまざまな濃度のパーコール溶液を用いて分画化された精子を用いて体外受精を行い、最も受精率が高かった分画の精子のPLCzeta保有率を免疫蛍光染色により確認する。そして、選抜された精子を用いてICSIを行い、MPFやMAPK、前核形成など卵活性化に関与する各種現象について解析する。 新たな卵活性化方法の開発については、まずPLCzetaタンパク質を合成する。そして、卵細胞質内への導入方法を検討する。具体的には、電気刺激あるいはタンパク質導入試薬を用いて行い、導入効率、卵活性化や胚発生効率などを調べ、最適な手法および条件を検討する。
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Causes of Carryover |
産前産後休暇を2014年12月から取得しています。当初、カルシウム測定のための機器購入を予定していました。しかし、機器納入が産休に入るまでに間に合わないようだったので、機器購入を産休終了後に延期することにしたため次年度使用額が生じました。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
卵細胞質内のカルシウム濃度測定のために必要な蛍光フィルターおよび備品を購入する予定です。
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